『天使の夜』
天気予報では明日は久しぶりに晴天となるらしい。
朝から海晴姉が太陽のようにはしゃいでくねくね踊る姿が見られるのだろう。
にこにこの晴れマークや
小さな青空の笑顔のように無邪気な表情で
私の一つ上の姉がきらきら美しく輝くのだろうと考えると
晴れ渡った空から注ぐ太陽の光というものは
人の心に大切で大きな影響を与えるのだな。
昔から洞窟に家族が炎を囲んで育ってきた人類という種は
言ってみれば生まれながらにしてこたつむりとなることを宿命付けられ
冷たい雨の日などには気まぐれな猫にも負けないほどに丸くなり
今の世に日進月歩で進みゆく科学力を享受するのもまた定めと言えよう。
抗いようのない肉体の命令には
素直に流されるままとなり受け入れるようになってもう長い。
逆らえぬ快楽が、とどまることなく脈動する絶頂の予感が
この体にとって血肉の一部と変わる果ててもなお
明るく暖かい陽光が差す日は
ふだんほこりをかぶった奥底のスイッチがカチリと音を立て
あんなに子供っぽい笑顔のようなさんさん太陽が誘うのならば
ならばたまには外出もしてみようという気分に
私を導く──
思うに、この正体の知れない感情の動きを探れば
人の心を動かす魔法の全てを明かす研究の端緒になるはず。
それくらい私を思いがけなく街へと誘うわけのわからない力。
どこもかしこも節操なく時期が来てクリスマスのイルミネーションを始め
輝きに彩られている場所があるという話も聞いているのが
たまには少し遠くまで足を伸ばしたい気分の原因だろうか?
火が人類を導き、プロメテウス以来の我々を育んできたことを思えば
電飾のきらめきにさえも心を揺さぶられるのは本能と言ってもいいかもしれない。
本能なら仕方ない。
生き生きと体を伸ばす誰もが決して立ち向かうことのできない相手だからな。
自分の一部で
それは躊躇いや弱気、勇気や憧れと同じように、
永遠に分かたれることなくあり続ける友であり
あるいは、まるで恋人のようでもある。
悲しみ、祈り、受容とあきらめ、漂う真実と無の気配
塵から生まれる新たな星、激しく広がる変化と熱と、やがて帰る宇宙のかけらと
おそらくこの宇宙を形作る何もかもが
声明の形で私の体の中にあって
眠ったり、光に誘われたり、踊ったり
おでかけ予定の明日には元気をつけようと
今夜は珍しく鍋料理の大盛りを妹たちと奪い合い
たらの切り身とほたての交換で決着がつく
情熱と歓喜の舞踏に狂うこの冷え込む夜の喜びもまた
体の中に否応もなく燃えている星のかけらがもたらすものに他ならないと
胃の奥から温まり
満腹したから何かもういいか
明日は晴れた冬空を行く予定など晴れ晴れと語る子たちを
寒いのに奇特なことだ、勇敢で殊勝な心がけだ、若さとは無謀さなのだと見送るだけにしておこう
と、落ち着いた気分になった瞬間には思う。
だがこの安らぎでさえも
私の触れたこともない大きな星が巡り、死と誕生を繰り返す宇宙の定めが
舞踏会の会場へ続く長い階段にひっそりと孤独に転がるガラスの靴のように
次のドラマが始まる準備、
魔女の呪文の終わりのように見えた新たな幕開けとなるのか
実際に冬の風吹く晴天を迎えなければ何とも言えない。
緊急の予定は
果たして輝きを巡る放課後デートであるのか
ただの食べ歩きであるのか
それとも、家で落ち着くため足りなくなったみかんの補充となるのか
予定のない明日を待つのは楽しみなことだ。
これが晴天を迎える喜びであるのなら
愛する人と全てを分かち合いたいという願いが生まれるのも自然なことだろう。
いいものだな?
家族として何もかもを共にしていけること、
私に愛されているというのは。