海晴

『旅に出る』
あーあ!
だんだん寒くなって来て
なるべくならお部屋でぬくぬく、
のんびりしていたいものだ。
それなのにどうして
家の中で元気いっぱいの
子供たちを見ていると──
ときどきはどこかへ連れ出して
一緒に楽しめたらいいな、と
考えたりするのだろう。
紅葉も目に鮮やかな
秋の景色へ──
この季節には冷えないように、
ちゃんと着せるものを
用意してあげて──
それとも、自分たちで
お気に入りを身に着けて
先に立って私たちを引っ張っていくのかな。
まあ今のところは
お出かけなんて
全然ちっとも予定の一つもないんだけど。
日頃のお買い物に
たまに着いてきてもらうくらい。
それならもう少しだけ
足をのばして──
冬に備えた暖かい服を一緒に見てもいいかもしれない。
きっと大きくなっているだろうから──
だとすると、
さらにもうひとつ思い切って
何か寒い季節を乗り切る力の
おいしいものでも食べに出かけに──
なんて。
やっぱり、想像してみるだけなら
自由だものね。
でも私にとって一番大事でゆずれない
旅の条件は
もしかしたら──
ちゃんとあたたかい
帰るおうちを忘れずに
元気に戻ってくること──
旅で疲れたら
ほっと体を癒して
もう、しばらくどこにも行かなくていいなんて
その時だけは思ってみたりして──
にぎやかな家の中の景色がなければ、
帰って来るんだって知らなければ
どこにも行けない──
そんな調子だって別にいいんじゃないかしら。
今日も、家でゆっくりしたい気持ちと
せっかくだからみんなと出かけたい気持ちで
ずっと、大好きなお部屋にいるままだ──
いつかまた、しっかりと出かけていくときに
いちばん大事なことを忘れないように、と思いながら──
そんな時間が案外いいもので──ときどきまたこうしているんだと思いながら。