ヒカル

『楽しい秋を』
秋になって
やってみたいことがたくさん増えても
まだまだどうしても
やり足りないこと、
むずかしいこと、
満足までは
まだ遠いこと──
いろいろある。
なにしろ、きょうだいの多い家族だから
行楽の秋もそんなにたくさんは
楽しめないだろう。
近くの公園くらいだけど
なるべく遊びに連れて行って
深まる秋の景色を一緒に見れたら
いいかもしれないなと
そう思っていたら、
連れて行った子はみんな
広い公園で遊びまわって
どちらかというと運動の秋みたいになっている。
暮れるのが早い
秋の時間を惜しんで、
あと少しでも、と
汗まみれになって──
それから今日みたいな雨の日は
いつものお気に入りの本を抱えて
みんなで集まったり、
読書の秋と言っても
わいわい話の種にするのが
一番の目的だったり──
せっかくやってきた秋なんだから
たくさん特別な思い出を作れたらと
考えている私たちのことは知らないで
いつもの通りに
好きなように
思いのまま──
そして私たちもまた
普段と変わらないみたいに
振り回されてあわてているというわけだ。
これはこれで
ちょっと安心もする──
毎年が特別な秋になるのは
私にはちょっと目がまわるかもしれないから。
またいっぱい振り回されて
遊んであげよう。
体だけは丈夫な私だ。
小さな妹たちも
いつか──
同じくらいに元気に育ってくれるといいな。
大人になって、
私が元気なのは
体力が取り柄の家族にいっぱい遊んでもらったからだと
覚えていてくれたら──
そうなったらうれしいな。
ヒカルの秋は、今年も通常営業。
子供たちがちょっとくらい遊び足りなくて、無理を言われたって
私はたぶん、また全然平気な顔をしているんだ。