『りゅうせいぐん』
亞里亞のお屋敷に招かれて、亞里亞とそばで控えるじいやさんとティータイムがはじまった。
「亞里亞様は、流れ星に叶えてほしい願いがたくさんあるとのことで」
「それはいいことだね」
「そこで、亞里亞様のお母様が流れ星を呼ぶ機械を開発しました」
「少し待ってほしい気もするけどまあ話の続きを聞かせて」
「その結果、地表に向けて多くの隕石が降り注ぐことになりそうです」
「話が始まって数秒で地球最後の日」
「それに対して、千影様の魔力や鈴凛様の機械や春歌様の薙刀や白雪様のお菓子のスポンジや花穂様の応援で守り切るので大丈夫なのですが」
「まず何から言ったらいいのかわからないけど、とりあえず白雪のお菓子って」
「亞里亞様のお誕生日に用意した巨大ケーキがよかったのだそうです」
「そうなんだ、よかったんだ」
「数もたくさん作って地球全土を守れそうだと」
「数も……」
というわけで解決したのでめでたしめでたしだそうだ。
「兄くん……本当は私も……流星を呼ぶのに協力したかったけど……」
「気持ちは届いたかもしれないということにしよう」
「ただ……流星はときどき光属性の場合もあってね……」
「光属性だとダメなの? いや詳しく聞くと大変そうだから聞かないことにするよ」
「実は、まだ問題があります」
じいやさんは話を戻す。
「皆様が楽しそうなので、亞里亞様も地球の危機に対して何か協力したいのだと」
「がんばるの」
「流れ星にお願いをしても、それは叶わなかったそうなので」
「叶わなかったの……くすん」
地球の危機の原因でもお願いはするんだ。まあせっかく流れ星を呼んだんだからするのか。そうかな?
「よし、つまり亞里亞が隕石に対抗するパワーを身に着けるのに協力するのが、今年の誕生日記念SSの目的なのか。がんばるぞ!」
今年の誕生日記念SSはちゃんと終わるのかどうかわからなくなってきた気もするな。
「亞里亞は歌が得意だから……音波を増幅する機械でも作って隕石を破壊できるか、鈴凛に連絡して聞いてみよう(ピッポッパ)もしもし?」
「はーい、できるよ」
できるのかよ。
「じゃあ、あとで音波メカを届けるね」
というわけで解決した。めでたしめでたし。
「でもせっかくだから、他の妹たちがどんな状況か確認してみよう。可憐はピアノの音波を増幅したりして隕石を撃墜してるの?」
可憐に連絡してみた。
「お兄ちゃん、実は、可憐のピアノはそこまでできるほど上手じゃないから……」
腕前が関わってくるんだ。可憐のピアノは上手だと思うよ! でも隕石の破壊まではしてほしくないのは確かだよ! そこはまあ、よかったよかった。
「だから、お兄ちゃんへの愛の力を増幅してぶつける機械を使っているの」
「そういうのもありなんだね。なんでもありだな」
「でも、お兄ちゃんへ届けたい愛の力だから、どんなに撃っても隕石じゃなくてお兄ちゃんに向かってしまうんです……ごめんなさい」
「えっそれ大丈夫なの」
「……心配ないよ、兄くん……先日のハロウィンの私のいたずらで、ゲーム版のあれで兄くんの中に眠る魔王の血のパワーを増幅させておいたから、どんな攻撃も近づく前に消滅させるんだ」
「いたずらならしょうがないな。ハロウィンSSを毎年書く習慣がなくてよかったような……ちょっと見たかったような」
というか改めてあれだけど、千影が魔王の娘なら血縁エンドだと僕も魔王の種族なんだね。シスプリの設定は読者の自由が大きいので、このSSではそういうだけだということにしよう。いや助かったんだけど。
「しかし、これは先の予想ができなくなってきたぞ。まさか雛子まで戦っていたらどうしよう」
「おにいたまー! ヒナはいつも元気で明るいから、元気の力を使う機械でがんばってるよ!」
「そういうのならいいのかな?」
「でも、ヒナの元気はいつもおにいたまと遊びたい元気だから、おにいたまに向かって行っちゃうの」
「うんまあ、それでもいいんじゃないかな。元気が一番!」
だんだん麻痺してきた気もするけど、まあギャグSSだからいいか。何があっても最後はちゃんと、もう流れ星なんてこりごりだよーちゃんちゃんで終わるはずだ。
「これはちょっと……困ったことになったね」
「今回一番ギャグ展開をしている千影がどうしたの」
「元気の力は……光属性になるから……魔王と化した兄くんを消滅させてしまうかもしれない」
ハロウィンのいたずらがまさかこんなことに。
「でも……ギャグSSだからたぶん大丈夫だよ……」
「千影がそう言っても、納得できそうなできなそうな」
こんなになってしまった当サイトの千影のイメージだけど、もうすぐ公式のVTuver千影がちゃんとしてくれるに違いない。公式のことだから、考えてもいなかったカオスな方向に突き進んだりして……ああいや、思わぬ新しい魅力を見せてくれることもあるかもしれない。11月2日公開予定の回のゲストは鈴凛ちゃんだよ! 楽しみ!
「まさか鞠絵まで戦ったりはしていないと思うけど、一応連絡してみよう」
「兄上様、実は白雪ちゃんの作ってくれた栄養満点のメニューで隕石を止められるくらい元気になったんです」
「千影が一番ギャグだって言ったけど撤回しようかな。白雪いつもそんなだっけ!? そうかも。えっその料理何?」
「兄上様も興味がおありなら……これからでも、一緒にお食事できたらうれしいです」
「鞠絵がそこまで言うなら、断る理由はないな!」
「待ってくれ兄くん……愛情たっぷりの手料理は光属性になることが多い……消滅しないように気を付けて食べるんだ……」
光属性って意外と世の中に多いんだね。僕このままで大丈夫なの?
「衛と咲耶はちょっと予想しやすいほうだけど一応連絡してみるか。咲耶なら機械とか必要なく普通に愛の力だけで光線とか出せそうだし」
とか言ってたら無数の光線が向こうから飛んできたから避けるとして、咲耶への連絡はまたあとにしようかな。せめて体を治すか光属性耐性スキルをセットしないと。
そこに亞里亞のお屋敷にお客だ。
「アニキ、亞里亞ちゃんに音波メカを持ってきたよ。たぶん衛ちゃんも近くにいるから、貸してあげたメカの様子も見たいからね」
「衛はどうしてるの?」
「運動能力を増幅して、隕石が落ちる場所を知らせて回ってるよ」
「おお、重要な仕事っぽい」
「球技が苦手だから隕石は直接相手にできないんだって」
「隕石を撃ち落とすのも球技でいいのだろうか?」
これでだいたい妹たちの様子はわかったかな。あとは四葉がバリツを使ってライヘンバッハパワーで隕石と戦っているのを確かめたらそれでよしと。
「フハハハ、兄チャマ!」
「ライヘンバッハパワーで戦っている子があげる高笑いではないな。どうしたの四葉!?」
「千影ちゃんが兄チャマにいたずらしてるのをチェキしたので、四葉も仲間に入りたくて魔王パワーを引き出してもらったのです!」
つまり全員血縁エンドなら、四葉も含めてみんな魔王の種族ではあるのか。
「ここから魔性の気配がして駆けつけました! 兄君さま、安全なところへ!」
「その魔性の気配はたぶん僕もだけど……」
「四葉ちゃんを相手にしたくありません……聞かせてください、いったい何が目的なのですか」
「この力で隕石から世界を救ってまわっているのでほめてくださいデス!」
いい子だな。あと魔王キャラに意外とデスの語尾が似合うね。死神キャラっぽさも出てしまう。
「ところで魔王になった四葉はどうやったら元の体に? どうして千影ちゃんは目をそらすの?」
「まあ地球が救われたからいいじゃないか」
「わーい、兄チャマ!」
「よかったです、兄君さま!」
その横で亞里亞も元気に歌って楽しそうだから(事実をすべて伝えない叙述トリック)、これでよし。
なんかまわりから魔族っぽい見た目の生き物が湧いてきて魔王の四葉を胴上げしたりしているのはたぶん別の話ということで。
「お兄ちゃん、会いに来ちゃいました。あっ四葉ちゃん!? 助けなきゃ! この機械で、えーい!」
グワー!
「おにいたま、ヒナも四葉ちゃんを助けるよ! えーい!」
あれー!
「にいさま、ケーキを持ってきましたの。ふう、富士より高いケーキは姫の細腕では運ぶのが大変ですの」
「とりあえずまあ言いたいことのいくつかは抑えて、がんばったね白雪!」
「わーい兄や、うれしいね、一緒に食べようね」
「もちろんだよ! ウググ、グエー! でもおいしい!」
まあこのあたりでだいたいオチがついたということにしておこう、めでたしめでたし。