氷柱

『しっかりしなさい!』
どうもこのごろ
だらだらした空気が
家の中に淀んでいるようで──
よくないわ。
もう!
ゆっくり落ち着いて
勉強もできない。
しゃきっとしなさい!
それは、気持ちはわかるわ。
穏やかな季節になって
趣味に仕える時間もいっぱいで、
運動だって読書だってなんでもできる。
なんなら芸術も
その辺を探せば庭の石の裏側あたりから出て来たりするかもね。
秋だもの。
だからといって
節度を忘れて
夜更かしばっかりだとか
動けなくなるまで食べる毎日だとかは
もう少し考え直したほうが
いいんじゃないかしら!?
あんまりうるさく言っても
嫌がられるかもしれないけど
まあ、私だったら普段からくどくど
人に文句を言って嫌がられるのは慣れている。
こういう時こそ
言いたいことを言わせてもらおうじゃないの。
ええ、そうよ。
氷柱がいる限り
これ以上、私の家族に
だらだらさせることはできない──
目標はメリハリのある生活よ!
やりたいことばっかりの秋だからこそ
計画性が問われるというもの──
早起きして
よく運動もして、なんなら私だって付き合ってあげて
夜長とか寝ぼけたことはベッドで言いなさいと
布団に放り込んで──
たまに夜更かしをしていないか
元気な寝相で布団をはねのけたりしていないか
見て回らないと!
おせっかいでも
うるさくても──
私がそうしたいって思ったんだから
やらせてもらわないと気が済まないの。
わがままで強情なのは──ちっちゃい頃からの性分だから
そろそろ慣れてもらわないとね。
あなたも──
小さい頃の私を知らないからって
手加減はしないから
そのつもりでいることね。
それに──蛍ちゃんまでぼうっとしているけれど
いつもなら今の時期は
ハロウィンの衣装を考えて張り切っているというのに
どうしたの!
とか言ってしまったら
なんだか、思い出したように張り切りはじめちゃった──
去年の怖そうな衣装を持ち出して
あんなのが出てきたら、もう妖しいものは我が家に近づくことはないでしょうね。
まあ、おばけとかそんなのは迷信だけどね。
じゃあ、そういうわけだから
たまに夜の廊下で私を見かけても
見回りしているだけだから、おばけと見間違えたりしないよう
気をつけるように!