『おでかけ』
春のお出かけはいいものだ。
なにしろ、こう見えて
新人とはいえお天気お姉さん。
頼りなさそうでも──
お散歩に出かける時間を見つけるくらいなら
自信がある。
柔らかな日差し、
気持ちの落ち着く街並みの眺め。
花開く季節を歩いてゆく──
本当のことを言えば
もう少し雲の見方に詳しくなって
誰かと並んで少し遠出──
安心してキミをいい景色のところへ連れて行く
春の日をたっぷり使えるお楽しみなんかも
やがては期待したいところなのだけど、
短時間にとどまらない正確さを求めると
ベテランの気象予報士でも難しいと聞くから──
よく晴れた日も
ときどきは、冷たい風。
急に強く吹き始めたら怖いものね──
春が来たっていうのに
一人で歩いてみたり
誰かを誘っても
すぐ帰って来る予定のルートだったり。
お姉ちゃんだから
あまり、まわりに無理もさせられない。
いや、たまには
まあいいかって思い切った予定を考えたりもするけど。
こう見えて──自分では慎重なつもり。
こんな海晴を
春の景色の中に大胆に連れ出していく
ステキな人は現れるのだろうか?
ちょっと心配性なところが
お姉ちゃんに似ているかな?
でも──ああ見えて
かわいいようでわがやの長男。
手をつないで道を歩いたら
帰るのを少し遅らせて
寄り道をしようなんて言ってくれても
ちっとも不思議じゃないはずだ──
出会いの季節に
キミのまだ見たこともない顔を
知ることができたらな。
そんな期待をして短い散歩に誘う毎日──
お姉ちゃんの言うことをよく聞いて
一緒にいてくれる弟クンは──
うちの自慢のとってもいい子だ。
少しだけお天気に詳しいお姉さんは
風が冷たくなるのを知っていて
ゆっくり歩きたい帰り道も見つけてしまうのだ──