さくら

『さくらのだいすき』
さくらがすきなのは
えほん。
えほんをよんでくれる
お兄ちゃん。
お兄ちゃんといつもいっしょの
はるやすみ──
あしたから、みんなのがっこうや、ようちえんが
はじまるの。
えほんをとしょかんにかえして
おれいをいって──
あしたのじゅんびができたから
もう、はるやすみはおしまい。
もっと、ずーっと
お兄ちゃんといつもいっしょならいいのに!
みぞれおねえちゃんが
いうには──
わかるわかる、
きもちはとてもよくわかる、
って。
それから、
さみしいときに
なにひとつきもちをかくさないで
ちゃんとつたえたり──
おとなになったら、
おおきくなったらって
できるかどうかなんてあとまわしで
やりたいことをつたえるのは──
おねえちゃんたちがわすれていることを
おもいだせるから──
みぞれおねえちゃんも、みんなとすごしたはるやすみは
とてもだいじだったんだって。
もう、きもちをかくさないで
みんなみたいに
おおきくなったらわがやのちょうなんのおよめさんになるんだ!
きもちをかくしたりしないんだ──だって。
むずかしいことだけど、はるやすみのちかい。
いつも、ちっともできないことばかりで
たいへんにしている
ちいさいこどもたちがそばにいるから──
おとなになっても、ほんとうはできないことばかりで
これからあたらしいできごとに
むかっていって
ないたりわらったりするのがふつうなんだって──
さくらがいつもそうしているから
それがいいんだって。
でも、さくらは、できないことばっかりより
おとなになって
いつもお兄ちゃんといっしょにいられたら、いちばんいいな。
ずっとずっと、それでいいのにね。
ついにはるやすみがおわって
さくらのすきなくまさんがまっている
さくらのすきなおふとんへはいっていく──
さくらのすきなお兄ちゃん、
どこにもいかないで
こんやもきっと
ねむるまで手をつないでいてね。