氷柱

『三十六計』
戦とは、まず自分の身を守る目的こそを優先する。
すなわち、
最善の策として
戦そのものを避けること。
それが叶わないなら
逃げるのよ!
立夏ちゃんの冬服のうわさは
春休みの長さに少し退屈していたみんなのもとへ
少しずつ広がり、
せっかくだからしまい込む前の
ファッションショーや交換会──
そして、春らしい明るい色の着回しテクニックが
それぞれみんなへと──
暖かい季節の女の子たちの話題を奪い、
春休みを徐々に、
それ一色のみに染め上げようとして前進を続けている。
さて、立夏ちゃんの服が似合いそうな
同じくらいの背格好といったら誰かしら?
身長──
体重は、少し違うけど
サイズを縮めるのは広げるよりも簡単だというわ。
いや、私はあんまり裁縫はしないから知らないけど、
自分の得てではない分野を知るということは──
そっちで話を続けても、主導権を取られるだけだとわかっているものね。
ホームグラウンドにうまく誘い込んで
有利な状況を作って、
戦わずに相手の戦意を失わせる──
これができなければ
いつまでも一枚上手の相手に好き放題されるだけ。
天使家七女、
氷柱ともあろう者が──
氷柱、あなたは
一日の長がある姉たちであっても、いつまでもやられっぱなしとは
言わないでしょうね!
ただ、言うは易く
おやつで相手の気をそらすには
兵糧と資源の備蓄の差が物を言うし、
通用する相手も限られる。
となれば後は──
おでかけや買い物に付き合う約束で
話をそらすのが一手。
なにしろお休みで退屈しているところに
図書館に付き合う約束ができたら──
こっちの行きつけの場所なら、いくらでも有利な展開は作れるもの。
明日は晴れたらお出かけよ。
老獪な相手に通じるような兵法の本も探さなきゃ──
あなたも暇なら、ついてくる?
ご主人様に役に立つ本を探す
お手伝いをさせてあげてもいいのよ。
そうしたら特別に、明日はいつもの荷物持ちの仕事は許してあげるんだから。