『寒い日は』
これは
温かい飲み物。
寒い日に飲むと風邪をひかないと言われているわ。
ホットチョコレート、
レモネード、ココア、ミルクセーキ──
他にもさまざまに
お好みで選べると言い伝えられているそうよ。
そんなに便利なものがあるのね。
知らないと損をするわ。
さて──
風のうわさで聞いた
本当かどうかもわからない話によると、
寒い日は大変だけど──
がんばって元気で過ごしていれば、
優しいお兄ちゃんが様子を見に来てくれるんだって。
時間の約束をして
待ち合わせをしたり──
お菓子のお土産を持ってくることもあるという。
へー。
ふーん。
私の目の前には──
安易に考えなしの約束をした挙句
誰の誘いも断り切れずに
あちこちの部屋に連れ回され、
へとへとの顔をした
おまぬけな人がいるようだけど──
きっとこんなに情けないのは
憧れのお兄ちゃんとかいう存在ではないようね。
妹のほうから
きっちりとしつけをしておかないと何もできない──
言ってみれば
ご主人様を持った下僕というのかしら。
きっとそうね──
だから。
待ち合わせの約束をして
人と会う用事があるのなら
疲れ切ったり弱ったりしないように
見てあげたり──
体にいいものを教えたりするのも役目なんだわ。
あなたが体調を悪くして
悲しむ子がひとりも出ないように
私が気を付けないと──
でないと、なんにもできない下僕がいるんだから。
ああ大変なことだわ。
おうちにお兄ちゃんがやって来るって──こんなに面倒くさいのかしら?
まったく、困ったこともあるものね。
私が作り方を知っているものは教えてあげてもいいわ。
知りたいでしょう?
そうでしょう?
下僕の身を守ってくれるやさしい飲み物なんだもの──
私が知らないむずかしい調理法は──ええと、別の誰かに聞くといいんじゃない?
あとはあったかくして早く寝るといいと聞くわ──
昔から言い伝えられているんだから、多少は信頼できるかもしれないわよ。
あとは──
ばかは風邪をひかないというくらいだから
今日だけは私が言いたいことがあるのかどうか
何も考えず
何も気づかないようにして──
ゆっくりのんきに心配事もなく眠ることね。
後で話があるけど──それはまた今度でいいわ。
先のことは、今日だけは考えないで。
ああ──そもそも下僕が考えなしの約束をしたから始まったんだったわね。
やっぱり──あなたはそのままでいいんじゃないかしら。