『一人一個』
ふむ──
確かに。
この華やかで明るく、
前向きなたくましい子のようで
こんな友達がいたらと思わせる──
包装と、それにふさわしい豪華な色合いの中身。
一方こちらは、
質実さを形にしたような美を感じるが
口に入れた時にふわっと広がる
確かな力強さと、
噛み進めるたびに
こうでなければならない、
これこそが答えなのだと
と決めた自信が伝わり、
なかなか忘れられない体験を与えてくれる。
どれをとっても外れはなく、
私たちに豊かな時間をもたらす。
お菓子とは──どこまでも喜びを突き詰めた情熱。
この果てしない宇宙の
かなり多くの部分は──
甘く美しくお菓子の楽しさを求め続けた人間の気持ちが
広がっていって埋め尽くしているのだろう。
冗談だ──いや、口に含んだあの時には
その冗談を本当だと信じられるのだ。
ハロウィンにおうちの子供たちが喜ぶのも不思議はない。
トリックオアトリート──
どちらをとっても間違いがない
ちゃんとおばけのふりをしたらしいずるさだ。
しかしその日が過ぎると
仮装もパーティーの飾りつけもたたんで片付け、
見た目も華やかなパーティーメニューもしばらくはお別れ。
にぎやかさだけは
あの時と変わりがないけれど──
人間の姿に戻ってしまった以上、
お菓子を選ぶのも
一日に一個だけ。
ましてや私たちは年上なのだから
手本とならなければいけない──
それはとても
考えることの多い選択──
一日、思いを馳せていたところで
答えが出るとは限らない。
ただ──好きなものを考える時間が
楽しいことは救いだ──
迷っているうちに、第一候補から順番にとられていくとしても
私はかわいいお菓子を見つめて悩みたいのだ。
一人でお茶やコーヒーを飲みながら考える。
お茶やコーヒーには砂糖もないのに──
家族に囲まれたこの場所で
私はお菓子を、一個だけ選びたくて仕方がないのだ──