真璃

『ラブリー』
ハロウィンが近づいて、
おうちのなかは
うきうきしている。
せいいっぱいにいじわるな顔をした
かぼちゃやおばけの飾りがかわいくて──
色とりどりの布が広がって
愛らしい衣装になるのを待っている。
こんなに陽気な
準備が続くのなら──
一年中ずっとハロウィンでいいのに、
暦を決めた大人は
まだマリーの好みがわかっていないみたいで、
いつまでもとはいかないのが残念ね。
ところで、マリーのいとしいフェルゼンは
なんだか自分ではないものに
仮装してなりきって
はしゃぐのに──
わくわくするほうなのかしら!
どうなんだろう?
女の子たちの間で
人気があるのは──
三角帽子を合わせて
ときには愛らしく、
わりとシックで
たまにはセクシーな、
あの魔法使い。
自分ではない何かに
変わるというのが
テーマなら──
まるでひとつとして制限もなく
なんにだって変身しそうな
あの夢のある衣装に人気が集まるのも
わかるわね。
すっかりうまく
化けてしまったために──
いったい自分は
いたずらばっかりしている子供なのか
それは仮の姿で
実は全ての願いを思いのままにして、
おばけもかぼちゃも残らず手足のように操る
いまだ誰もその正体を知らない生き物か、
本当の姿はどっちだったのか?
わからなくなってしまうかもしれない。
きっと答えは──魔法がかかりそうな
マジカルな夜がやってきた時に決まるわね。
それまでは、こそこそ気付かれないように
ばれないように普通にしていなくっちゃ。
まだ──知られてはいけないわ。
小さい子たちは、あこがれの衣装を絵に描いたりしながら
仮装が出来上がるのを待っているの。
マリーは、おうちのみんなは──そしてフェルゼンは
これからいったい何に変わってしまい、
どんな時を過ごすのでしょうね?