氷柱

『最後の謎』
大事なアルバムは
無事、ママの手元へ戻って行き、
騒がしかった我が家にも
つかのまの平穏が訪れようとしていた頃──
霙姉様が、アルバムのページを張り合わせて作った
あのポケットの存在をぽろりと漏らしてしまったせいで
またまた蜂の巣をつついたような──
フフ。
それにしても、霙姉様がふとした拍子で見つけられるような
ちょっとした仕掛けを、
まさか、この氷柱も気付かなかったと思われているだなんて
あなどられたものね。
ここだけの話──
夕凪がほっぺたをぺかぺかにして
アルバムを手に駆け込んできてから──
そう、最初にみんなで広げたあの時から
ページをめくりながら気が付いて──
誰も見ていない隙に
一人で確認していたなんて言ったら
信じるかしら?
まあ──その中身を誰にも教えるつもりはないから
これまでも、これからも
何も知らないのと変わりはないんだけど。
ママが少しわかりにくくしまっておいたのなら、
それは──きっと、誰も気が付かなかったということなのよ。
でも、一つだけ不思議なのは
私だったら──
わざわざ特別にしまっておくほど思い入れのある写真だもの。
もし、自分の身に置き換えて考えるなら
数日か、もっとなのか、ある程度の時間をおいて撮ったと思われる複数の写真は
後から見直すときに便利であるように──
それから──なんとなくそうしたくなるように、
重ねてしまっておく場合は、時系列の順番に並べると思うわ。
あんなふうに──
しておくものかしら?
もしも、誰かがこっそり
この氷柱よりも早くあの写真たちを見つけていたのだとしたら、
それができるただ一人の人間、
おうちのみんなで揃って最初に見たあの時間よりも
早く知る機会がある、とするならば──
まさか、あの子がかしこくママに気を使ってみんなに秘密にするなんて
ぜんぜん普段のイメージに合わない、そんなことってあるのかな?
まあ、ただ単にママのことだから
几帳面に写真をそろえる性格じゃなかっただけかもしれないわ。
たぶん──それだけの話ね。
まったく芸術の秋なのか文化の秋なのか、
まるで我が家の秋の一番の盛り上がりみたいな出来事が終わって、
それを待っていたかのようにすっかり季節は急いで
寒さを増しはじめた──
こういう時期が特に油断できないのよね!
あなたもかわいい家族が調子を崩さないように見ていてあげて。
これからも元気に育って、
やがてみんなが大人になって綴るアルバムは
今の私たちの誰だって──想像もできないような内容になるに決まってるんだから
それを見せてもらうまで、風邪なんてひかせられないんだから。