吹雪

『電気力学』
現代社会で
誰もが欲しがると言ってもいい
有用な技能として
家事の能力があります。
掃除の途中の部屋の中、
散らばったものを
魔法のようにてきぱきと
片付けていく手際は──
簡単に身につくものではなく、
希少でありながら
あらゆる場面で役に立つ──
人として生まれた者が
誰でも一度は夢を見る、
整理整頓に
何不自由のない生活。
この世界の誰が
これほどにも──
あこがれの力を持ち合わせるというのだろう。
あるいはまた、
人の求める
夢の能力──
時に見なかったふりをして、
またある時は都合の悪いことは忘れ、
何もかもが上手くいくわけではない人の身を
仕方がないと
受け入れて
許すということ──
今になって言っても仕方のないことだけれど、
さくらがまた今日も
片付けのお皿を落としてしまった時──
ぱっと逃げた
夕凪姉か、
すぐに掃除用具をもって駆けつけた
星花姉のようにか──
どちらかが得意であれば、
騒動も大したことはなかっただろうし
戸惑う時間も少なくて済んだのだろう。
まあ、いつもの大さわぎではあったのだけれど。
そしてまた、いつもと変わらず
片付けの手伝いをしても不器用で思うままにいかない
私の対処法だったのだけど──
いつか人間は
長い時間を経て
望む通りの能力を得ることがあるのか、
あるいは取り逃した力の欠けていることを
物足りなく思い続けるのか──
人の成長に期待できる能力もあるようですが、
私はそれも得意ではありません。
できれば──
身に着けたい能力を、
人はどうして可能かどうかも確かめずに
あこがれるのか。
私は──割れた皿で手を切ることはなかったので
今日は少しだけ成長を感じたとは言えます──