氷柱

『夏が来る』
今日も蒸し暑い日!
どうなってるの?
海晴姉様の晴れ呼び踊りでも
7月の真ん中あたりに
ぴかぴかの晴天をなかなか呼び込めない。
せめて、気持ちいいくらいに晴れたなら
こっちだってやりようがあるのにね。
はしゃぐ子供たちに向けて
庭に水を撒いたり──
それぞれのお好みに合わせて
冷たいアイスでも買ってきたらいいのよ。
誰も文句をつけようもない晴れ空の下では
あきらめるしかないんだから。
まあ、でも
私ははめを外したりできないし
子供みたいにアイスの食べ過ぎで
お腹をこわしたりする子を
見ていないといけない立場なんだけど──
だから別に、アイスくらいではしゃいだりしないし
暑い夏といえば
やっぱりこれだなーなんて
のんきに喜んだりしないし。
きんきんに口の中をせめたてる
とろけるような甘さが
夏の日差しの下で魔法みたいに
へたばっていた私たちの気持ちまでさわやかに変える体験なんて
別にいらなし
そもそもフレッシュで冷たいアイスなんて別に食べたくないし
そんなもの食べたことないし
アイス? なにそれ?
すぐ調子に乗って甘いものをいっぱい食べたがる小さい子を見ていて
決して一緒に調子に乗ることなどあってはならない年上としては
生まれてこの方どこにも見たことも聞いたこともない言葉が出てきたわ。
夏にぴったりの
きれいな水色のミントのアイスなんて──
きっと地球の裏側か
まるで知らない環境にある遠い星の
海の底にでも沈んだ
現実とは無縁の幻のようなものよ。
それでも、もしもこんな
梅雨が戻ってきたようなでたらめな雲に翻弄される日じゃなくて
他に方法はないってくらいに
輝く晴れた日だったなら
また話は違うのかもしれないけどね!
はっきり誰も
疑いようのない
まぶしい光の突きさすあの夏!
青い海辺の絵柄のカレンダーの日付は
もうまもなくまちがいなく夏が来るというけれど──
本当なのかしら?
この目で見て
体験して──
確かだとわかる瞬間まで気が抜けないわ!