氷柱

『そうはいかないぞ』
ははあ──
そういうことね。
ふふん、残念だったわね。
だまそうったって──
どこかからうわさを聞きつけた
妹たちのちびっこネットワークで
もう話は聞いているんだから。
私のお兄ちゃんはこんなに落ち着いてないし
黙っているとちょっと頼りになりそうな
きりりとした顔もしていない──
ぼんやりした感じが本物なの!
蛍ちゃんといえども
なりきろうとするのはいいけれど
少し、あいつのことを買いかぶっていたと言えるわね。
午後から日が当たって
みんなが帽子を選ぶから
人数分は足りなくなって、しまっておいたのを出してきたという
不自然な帽子をかぶっていても問題ない、このチャンス。
しかも、気温はまだ上がり切っていないから
薄着になる必要もない。
さては──と思っていたの。
実を言うと、さっきから
帽子に隠れて顔もそんなにはっきり
見えているわけじゃないけれど、
そこは事前の情報と
すばらしく回転する脳細胞の助けによって
事実に至るのは難しくない──
なんといっても、家族を見間違えるわけが
ないんだから──
さあ、帽子を取って早く顔を見せて
いつもの蛍ちゃんの顔に戻りなさい。
ほーら、やっぱり──
……