観月

『うつろ』
むにゃむにゃ──むっ?
ここは──
そうか、夢を見ていたか。
いい夢だった──ような気がする。
毎日がとてもいいお天気で、
いろんなところで
みんなで踊ったりしながら
長いお休みを過ごしたのじゃ。
なに、それは
現実にあったことで
つい先日に連休は終わってしまったと?
そうだったか──
では、あれもこれも
きっと本当にあったことと
あまり変わらないのだろう。
お外の遠い場所にも出かけて、
夢の中でもやっぱりわらわは
兄じゃに会いたくて、
わがやに帰るのを
楽しみにしておったな。
大人になるまで
長いお休みは続き──
体が朽ちても
会いたい気持ちが残って
日が昇り、日が暮れて
全ての大地は海にのまれ、
海は大きな火にまかれて
見つめる景色が
ちっぽけな塵だけになり、
塵は間もなく
お互いを恋しいと繋がりあい
星を生む。
むかし、どこかの
ご本で読んだとおりだったな──
いろんな人に
あったようでもあり──
花が咲くのを楽しみにしていたような
おぼえもある──
歌も踊りも習ったはずなのに──
寝起きの頭では、はっきりせぬの。
そうか、お休みはもう終わったのか。
そうそう──
ちっちゃな子が、おうちに早く帰るには
地図を見て──
目印を見つけるとよいとも聞いた。
これは、大事なことを思い出した気がするぞ。
さっそく、忘れないうちに
このあたりの地図を書いておぼえておくのじゃ。
目印になる
山の稜線──
見上げる星の色──並んだ形──
地元のおいしいお料理も
咲いている花も見つけて
そこに住んでいる人たちの顔も
なにがあっても忘れなければ
すぐに帰れるのじゃ──
わらわはかしこい良い子だとほめられたから、
そのくらいはすぐにできると思うぞ。
誰に褒められたのだったかな──?
夢を見る前の兄じゃだったかもしれぬな。
たくさんよいことをおぼえたら──
また兄じゃはおどろくであろう?
このあいだまでのお休みは終わった──これからは寄り道をしないで帰ることにしよう。