『心臓』
ああ。
お気に入りの本を──
ついに一通り
読み終えてしまった。
宇宙のこと。
素粒子のこと。
まだ未知のままになっていること──
人々の終わらない旅のこと。
日なたが暖かいから読書も進むんだ。
今は、何をするにもいい時期だな。
好きなことをして過ごすのも
のんびりするのも、
たまにちょっと無茶をするのだっていい。
しかし──
読み終えてしまった本の代わりは
そう簡単に見つからないものだろう?
どうしようか?
気まぐれで何となく手にして
そのまま気にしながら
部屋に積んである
料理の本。
歴史の本。
深海の探求。
名探偵のお話。
ファンタジーの旅やウエスタン──
今の私には無数の選択肢が示された。
たとえるなら──
目の前に置かれた、どらやききんつば
いや──でもそれだと
一緒に食べる贅沢な選択肢も発生するじゃないか。
いいのか──?
きっと、あとで体を動かしてカロリーを消費するのは
大変だぞ──
それでも──かまわないというのか?
霙はそれでも夢とロマンを追いかけるというのか?
そうか──霙ならそうするのだろうな。
やはり、好きなものがあるというのはいい。
どらやききんつばや大福はいいものだな。
こうして迷ったときに
新たな視点を示してくれることもある──
でもそんな損得は考えずに
ただ好きというだけでとてもいいものなんだ──
よし。
過ごしやすい毎日でもあるし
近いうちに連休だってやって来るだろう。
私の手の届く距離に──
料理と歴史と深海と名探偵とファンタジーとウエスタンと和菓子と
お天気とのんびりする日と旅と夢をまた──
いつでも指先で開けるように。
全身で飛び込めるように。
ちっぽけな人間に
それを許容するだけの広さは、この宇宙にあるものだと思いたい。
ふふ──明日は少し体を動かしてからにするかもしれないが
ああ、暖かい日なたがまた楽しみだな。