観月

『不動心』
気持ちの良い風が
吹いているな──
萌え出でた緑の葉を
そよそよとくすぐるように
吹きすぎるあの風は──
力のあるぬくもりは、やはり
南のほうの
龍王の住むお城あたりから
やってくるようじゃ。
こんなに良い風が
幼い子供の肌を優しく撫でて
励ますようにすると、
このままでは──
楽しくなって
お外でまた遊びだすのも
時間の問題であろう。
おいしいおやつを
みんなと食べて──
一休みする時間だというのに、
すっかり遊び続けてしまっては
晩ごはんも
お風呂も忘れて
また夜が更けるのを待たずに
ぐっすり眠ってしまうことになる──
そうならぬために、
良い子はがまん。
おやつのときは──
あんまりそわそわしないのじゃ。
少し前までは、
風が吹いたら遊びの途中でも
クモの子を散らして逃げまどい
冷たく凍りつく風を避けて家の中へ──
それが当たり前だったのも
まだ、何も忘れることのない
ほんのちょっと前の話だった。
あの頃も楽しかったのを思い出せるぞ。
みんなでいて──
兄じゃも呼んで
重ね着で大きくふくらむ重たい体も
すっかり忘れて駆け出して──
世界中のどんな遊びでもできる気になっていたものじゃ。
そして今は──のどかな風が誘う季節。
このまま誰も止めないで
子供たちの思いのままに任せたら──
大変なことになってしまうのは目に見えている。
いったいどうやったら止められるであろうか?
それとも──もう誰にも止められないというのか──?