ヒカル

『どこからどこまで』
この日当たりのいい
暖かい庭がおうちの庭で、
庭で遊び疲れるまではしゃいだのが
お昼寝をしているさくらだ。
そしてさくらと一緒によく遊んで、
隣で同じようにお昼寝をしていた
さくらのおうちの姉が──
ヒカルだ。
そんなに体力を使いつくすほど
走り回ってもいないのに
思ったより、長い時間眠っていたようだ。
春休みが続いて
小さい子を相手にしてばかりだから
ついにヒカルといえども──
なまってしまったというのか?
いや、どうだろう。
わがやの子供たちは
こと遊ぶとなったら容赦がない。
子供と、遊んだくらいで──ではなくて
子供と、遊んだからこそ──
体力自慢であっても
お休みを必要とすることになった。
たぶんそうだ。
でも、みんなよく遊んで楽しそうだったよ。
子供には広い庭を
ずーっと向こうへ飛んで行って、
飛び跳ねるボールもフリスビーも越えていく速さ。
追いつくだけでも早足で大変だ──
それならもちろん誰だって眠くなるわけだ。
春の陽気だし。
どれだけ走ってどこまで行っても
ぜんぜん満足なんてしない──
走っていった先にどんなに楽しいことが待っているか
まだなんにもわからないんだから。
子供の頃は、みんなそうだっただろう?
そんなさくらにつられて
やっぱり子供の頃の癖なのか
いつもの庭をどこまでも走って──
昔を思い出したみたいによく眠っていた。
そうなったら、この次は
どうなるか──
この庭を知る何者であっても一人残らずわかっていることで、
もちろん私も例外じゃない。
すぐ──また昔のように
どこまで走っていくのか自分でもわからない。
やっぱり眠って元気が出たせいだ──
それに暖かい陽気もだ──
春にはいつもそうしていたような、
すぐにあの頃へ連れて行こうとするんだから
慣れ親しんだ庭というのは油断できないな。
そろそろさくらも起きるだろう。
このあとも手加減はしていられないと思うんだ。