観月

『結末』
おもしろいお話にも
終わりはやって来る。
お姫様は王子様と出会うところで
絵本はおしまい。
みんなが顔を寄せ合って
続きを探しても──
姉じゃにせがんでも、
誰も物語の続きは教えてくれない。
にこにこと──
昔からそうなんだと、
姉じゃが小さい時から
おはなしはそうなのだと
伝えるばかり。
鬼退治はいつも
荷車いっぱいのお宝で終わるし、
犬や猿や雉だけではなくて
ゾウもキリンも抱えて連れ帰りたくても
そこまで気は聞いておらぬのじゃ。
うそのお話はきのうでおしまい。
似顔絵を描いたのが誰なのか
ついに知られぬまま終わり、
夕凪姉じゃがその後、
お皿に残ったピーマンたっぷりのお料理を
どうしたのかも知る者はない。
一口くらいは──口に運んだであろうか?
兄じゃや姉じゃから聞く
たのしい学校のお話によると、
3月いっぱいで学年はひとくぎり。
がんばった一年も、
すっかり開き癖のついた教科書とともに
思い出の中にしまわれていく──
お話は終わり。
兄じゃや姉じゃはこれから、
世界の誰もまだ見ぬ
みんなの知らない
お姫様と王子様の出会った後の続きや
鬼退治のあとのお話を
見つけるのであろうか?
ひとつの終わりのその後からであれば
きっと、そういうことになるのだろう。
ゾウやキリンはつかまるかの──
お姫様は王子様がどこへ行くにもついていって
ずっと手を握っているのであろうか。
やがては、夕凪姉の好きな食べ物もすっかり変わっているかもしれぬ。
わらわがまだおもしろい絵本で読んだことのない
あれやこれやを──
ついにせがんで教えてもらうまで、
そう長い時はかからないはずじゃ。
おもしろがってゆかいなことを
これから、なにもかも──
わらわは見つけるぞ。
兄じゃからも、いろんなお話を聞かずにはいられぬ。
小さな妹がせがんでまとわりつくのを──兄じゃは許してくれるかの?