夕凪

『桜色』
てんつくてんつく
じゃかじゃん
たのしいー!
季節はもう春。
寒い日があったって、
見渡す景色には
開きかけたつぼみの色。
うきうきするのは
もう、まちがいない!
わあーい!
お花見でもはじまらないかな!
それはもう、もうすぐのはずだ。
夕凪の好きな歌や
いろいろ考えた踊り、
去年の春より
好きになったものの数は
あまりにも多すぎる──
今日も、小さな妹たちと遊んで
いいお歌を聞かせてあげたり
夕凪がわくわくする好きなこと、
抑えきれないっていうことを──
みんなに教える時が来た!
でも、聞いてお兄ちゃん。
春はわくわく、
何をするにもいい季節。
そのはずが──
夕凪の歌を聞いて
みんなが逃げていってしまった!
なんで!?
気持ちを込めて歌ったのに。
そういえば、ヒカルお姉ちゃんも
運動が得意だから何をするのも上手だと思ったら
きちんと準備運動をして
体を慣らしてからじゃないと
すぐには、思ったようには動けないんだって。
なるほどー。
夕凪も思ったように動けていなかったのか。
春休みはみんなと遊んで覚えることがいっぱいだ。
好きなことをうまくやるって
好きなだけじゃ難しい──
だけどなぜか
うまくできないというのは
夕凪の好きな歌や踊りを止める理由にならないのだと
どこかでもう知っている──
誰が教えてくれたのか?
それは忘れても──
きっともうすぐ、桜の花が開いて
みんなが喜ぶから
夕凪もまたうれしくなりそうだ。
ついうっかり、好きなことばかりをはじめそうだ──
いつか、もっといろんなことを覚えたら
なんでも上手になりそうだ。
今年の花が開く頃は──間に合わないかもしれないけれど。
そんなことはあまり夕凪は考えないような気がするんだ──