『激唱』
エントロピーの手になる魔術で
やがて全てが無に帰る
この空しく寂しい宇宙に──
孤独に浮かぶ
ちっぽけな星の、
とある街では
ついに春を迎えたと
喜ぶ声が聞こえる──
誰もが鼻歌を歌わずにはいられない。
それも、この世の定めである
終末の運命は
まるで最初から何もなかったかのように
明るく優しく
夢のような言葉ばかりが
家の中を満たすようだ。
春が来たばかりだというのに、
いや、まだ冬と行ったり来たりで
確かに春だと言えないのに
今からこんなに喜んでいては
やがて花が開いて
庭先の暖かい光を浴びながら過ごす時、
どうなってしまうのだろう?
これからちっぽけな私たちはどこへ向かうのか、
答えは私の中にはない気がする。
やはり──誰よりも明るく歌う
小さな子たちを見て知るよりほかはないのだろう。
だいたい、世の中の歌が
楽しくて歌いやすくて
耳に残る者が多いために──
それだって原因の一つとなっていると
考えられるのだ。
家の中が光で照らされている
実際以上に明るく感じられて──
そんなことはないかもしれないのに
この季節が一番過ごしやすくて
そして一番──
愛しい家族といる時間が
幸せに感じられるなど、
子供たちをよく観察して──理由を探さないでは
誰もいられないような──
鼻歌で聞こえるのは
昔から一番好きだった歌や、
最近の耳に残る歌──
時によって変わるようだ。
オマエもまた気が付かないうちに
その口元から陽気な春の兆しがこぼれる様子を
聞かれているのだと言ったら──
信じるだろうか?
私も知っている歌だったら──
ついうっかり声をかけてしまう時もあるかもしれない。
たまにそうやって驚かせたくなるのも
春のせいだから──きっと春がいけない。