ヒカル

『おもちがあらわれる』
棚から出てきたのは、
お正月に食べきれなかったおもち。
まだ残っていたんだな。
しかも、袋に入った切り餅が
いっぱいだ。
寒い季節で──
まだ、痛んでいなかったようだ。
これがもしもカビで食べられなくて
悲しい思いをすると、
落ち込むあまりに
人とは何だろうか──?
と、柄にもないことを考えてしまうだろう。
しかしこうやって
元気で出てきてくれたおかげで、
みんなが喜んでおもちのまわりを
輪になって踊り、
どうやって食べようか話し合いながら
輝く笑顔のだんらんを
迎えることができる。
寒い時期が良かったと思うことが、
こんな強い風の音がするような日でも──
あるんだな!
おもちはすごい。
まるで太陽の様にみんなの気持ちを暖かくするんだ。
あ、太陽に当たると痛むから違うかな──
でも食べる時は太陽みたいにあぶるかな──
こんなよくわからない話をしても
だいたいオッケーだ。
なにしろ、おもちが出てきたんだから!
みんながおなかいっぱいになる分は
おそらくあるに違いないんだけど、
ここで食べつくした後は
たぶんもうおもちはだいぶ先。
最後のおもちを
悲しい別れの思い出にしないために──
まちがいのない
いちばんおいしい食べ方が必要だ!
私は──
なんでもおいしく食べられるから
みんなの話し合いの蚊帳の外。
ときどき、それはすごくいいぞと口をはさんでは
あまり聞いてもらえずに終わる立場だ。
まあいいか!
おもちがあるし!
オマエは──どうだろう。
何かどうしても
おもちをおいしく食べるには
これしかないと主張するなら、
そして──白熱した議論の渦に入り込む勇気があるなら
行ってこい!
私はなんだっておいしく食べてやるからな。