氷柱

『カレンダー』
今日のおやつはチョコレート。
なんだか知らないけど
いっぱいあるものね──
まだそれ続けるの? って顔はしないでいいの。
それは、いったん置いといて。
チョコレートは元気が出るみたいで
いいわよね。
なんだか一仕事を終えたように
くたくたの子も
今日は見かけたような気がするし。
誰が言い出して
誰が決めたのか、
雪も解けて寒さもほどほど、
でも油断しすぎて
立夏が裸でうろつくにはまだ早いこんな日は、
まったりして過ごそうと
みんなが選んだみたいに見える。
だらだらして溶け出す一歩前で
どれだけ耐えられるかのチキンレース
いくら長い準備を経た
大変だった日の後とはいえ、
こんなことで女の子がいいのだろうか?
だけど、考えてみたの。
たとえば──
誰かに贈り物をして、
好意を伝える機会があったとして、
たくさんがんばって──練習もして、
チョコを作るのも気持ちを伝えるのも、
そしてうれしそうにしているのかなんだか
へらへらした顔を今までよりも少し近くで、
こっそり眺めるのが今までよりわずかに恥ずかしくはなくなったような
気がしていても──
何もしていなかった頃、
とてもじっとしているわけにはいかないって
よくわからない衝動を胸に
行動を始めた時の
よくわからないけどできないわけはないだろう
何もわかっていなかったときより、
確かに間違いなく──チョコを作るのが上手になって、
気持ちを伝える経験も積んだのに、
むかし──何もしていなかった遠い昔に
自分が想像していたよりも
自分の手のひらで
チョコを作るのが上手でないような気がしている。
言葉を選ぶのが上手でないことを知ってしまう。
うれしいのかどうかなんなのか
じっと見つめるその人の顔を──
少し近づいた距離ほど
近づいたのかどうか。
踏み出した一歩の小ささに、
それを知ることに
驚きながら──
みんな──思っていたより
がんばっていたんだなって
自分で一歩を踏み出した子たちは、初めて気が付くの。
だから、休む日が必要だって
知るときもある──
下僕も、今日はちょっと──だらだらしているようね。
きっと、何か大変な日を過ごしたのでしょうね。
知らないけど。
たぶんそう。
まあ、いいんじゃないの。
みんなの話では
明日は音楽を聴いてゆっくり過ごすんだって。
しばらくは、まあ──いいと思うわ。
誰にだってだらだらする時があったっていいんだって。
それを知っているのは──きっと、疲れ切るまでやり切った人たちだけなんだから。