観月

『流転の定め』
風も
水の流れも、
大地の形も──
時に忙しく、
時にゆっくりと
姿を変え、
とどまらず
変わっていくものだ。
兄じゃも見たであろう。
凍りついた水の流れ、
葉を落とした立木、
水墨画そのままに
何もかもが止まってしまうような
冬の世界でも、
冷たい風は勇ましく吹き抜け
部屋の掃除は進み
そうしてもうすぐ
みんなと過ごした年も新しく入れ替わってゆく。
厳しい寒さの中も
巡るものがやがて
この地にも春を運ぶのじゃな──
ううっ、さむい!
願わくば──
早めにその時が来てほしいの。
でも、あんまり
入れ替わりが早くても
あわただしいし──
兄じゃはクリスマスが来たら
かわいいおうちのみんなと
過ごしてくれるのであろう?
その時に読んでもらいたかった
それぞれが用意した
とっておきのクリスマスの絵本が、
部屋の掃除でどこかに埋もれてしもうた。
わらわの分は見つかった。
マリー姉じゃの分もようやくじゃ。
さくらはおどろいたことに
ちゃんとなくさないように
しっかりしまった場所を覚えては
毎日なくしていないかどうか見に行って
確かめている。
どうしてもクリスマスは兄じゃに
読んでもらいたいのじゃな──
虹子も本があったようだが
どうやら青空が目を付けていた一冊が
流転の運命によって
今は見つからないところにあるらしい。
でも、まだ赤ちゃんの
青空の言うことだから
空想の中で見たとか
夢の中で見たとか
まだ手に取ったことのない本を
探しているようでもある──
子供が大きく育って
やがて見つかる
まだ見ぬ世界にある本なのではないか?
移り変わり、流れ流れていく世の定めが
いつか運んでくれるような──
青空の探している本の話を聞くと
そういう内容のようにも思える。
兄じゃも青空の面白い話を聞いてやっておくれ。
そんなによさそうな本が──クリスマスに間に合うと良いのじゃがな。