『帰り道』
暗くなるのが早くなったわね。
私も、外でゆっくり
電車なんて見ていたらいけないわ──
知ってる?
12月になって
気の早い子たちは片付けを始めたの。
大掃除でバタバタするのは
もうわかっているもの──
余裕を持って取り掛かってみるのも一案でしょう。
そのはずが──
やっぱり、本格的に
年の瀬が迫っているムードも
まだあんまりないから、
掃除の途中に発掘した本を読み始めたり
古新聞にまで手を出している。
まとめてヒモでぎゅうぎゅうにする前に
もう一回。
そんなことを言い始めたら、きりがないのにね。
私、毎年そんな姉さまたちの姿を見て思うの。
いくら年が上であっても
あれは見習ったらいけない!
何事もめりはりをつけて
やるときはきっちりやらなくちゃって──
そんな時、霙姉さまは言うの。
思い出に浸ったり
懐かしんだり、
一年を思い返しては、
今まであったことを振り返っては
足を止めるのは──
まだしばらく、
気持ちの上では無理だとわかっていても
無意識でそこにとどまろうとしているんじゃないのって。
いいことがいっぱいあったから。
来年も、これからもみんなでいられるとわかっていても
どんどん楽しいことが増えていくとしても
片付けが進まないのは
過ごした日々が楽しかったからじゃないかなって。
霙姉さまの言うことは難しくてよくわからないわね?
本気で言ってるのかも確かめる術はないし──
私は、掃除はきちんとしようって思うけど
どうなのかしら?
もう少し、暗くなっても
冬の風が少し冷たくなっても
線路を眺める場所にいてもいい気がする
私でも──
このごろは夕方から風が出る日が多いわね。
遅くなると心配をかけるってことは
わかっているのよ。
しっかり自分を律することが大事。
もう少しだけ好きな電車を見たあとで
帰るって、
それだけよ。