『道楽』
喜びも
悲しみももれなく、
ひとつ残らずが──
宇宙から見たら塵のような
小さな人間の営み。
そこには何かの意味があるのか、
理由を求めるのが間違いなのか。
答えを知らぬまま
心は揺れ動くもの。
冬が深まってきて、
家にこもる準備も
着々と進められている。
窓から差す光に照らされた全てが
冷たい季節の備えと
暖かな家の中で過ごす未来を描くためとして
用意された。
実は私は──
みんなには、食いしん坊だと
思われているかもしれないが、
必ずしもそうだと言い切れるかどうかは
判断がつかない場面もあると思う。
小さな子が皿をひっくり返したり、
うっかり鍋を焦がしすぎることがあったりと
未来をすべて予測することは
神ならぬ人の身では決して叶わず、
ありえる場合を想定するのみ。
わかってきたのではないか?
まだわからないか──そうかもしれない。
保存がきく食品を箱に入れて
いつでも取り出せるように
部屋の分かりやすい場所に置いておく──
家族と日々を重ねた経験は、
やがて起こるかもしれない未来のできごとの想像となって、
私に多くの準備をさせる。
多くのトラブルがある中で、
おなかがすいているのは
人の心に与える影響力は
比較的強いほうだと思わないか?
いろんな意見があるだろうが
おいしいものが人の心を動かすのは
多くの人が知るところではないだろうか?
本格的な冬を迎える
私の部屋は
まだきちんと散らかっていないけれど──
もう少し詰め込みたい気持ちもあるんだ。
オマエも経験があるだろう。
大事にしていた好きなカップラーメンを
自分で食べられなかったときの悲しさと、
相手には気に入ってもらえたようで
大事な特別を人に喜んでもらえた時の複雑な気持ちが──
そんな経験はないか?
ないなら別にいいんだが──
これから備蓄を増やすため参考に聞くが
オマエが好きなカップラーメンなどはあるか?
取っておいたら食べたい何かとか──
この宇宙の片隅の、
小さな部屋に用意された箱の中には
喜びも悲しみもぎっしり詰まっている──
片付けの途中で
ほこりっぽくて少し窓を開けて風通しを良くしている
突き刺さるような寒さの部屋の話に過ぎないけれど。