『先輩後輩』
勉強を教えてもらいに
ノートをもって。
古いぬいぐるみの
ほつれを繕う方法を聞きに。
いちばんお気に入りの
人形をもって
おままごとで遊んでもらいたくて──
きょうだいが多い
星花たちの家族は、
お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに
助けてもらうことがいっぱい。
とっても頼もしくて、
困っていることをなんでも
すぐ解決してもらえて──
年が上の人たちはすごい!
経験を積んでいるからすごい!
星花の知らないことを
いっぱい教えてくれるの──
でも、星花が
もう少し大きくなって
お姉さんになり、
やがて中学の制服にも
袖を通すときに
下のかわいい妹たちを
どれだけ助けてあげられるのか?
お姉ちゃんたちが
してくれているように──
夕凪ちゃんは、お姉ちゃんたちの制服を借りてみたり
すぐに大人になったような遊びをして
不安に思うなんて
全然ちっともないんだろうけど──
本当は、何も不安に思う必要なんて
ないのかもしれないけれど。
もし、夕凪ちゃんがかけたおまじないが
たちまち成功して、
明日の朝には大人になって
ついでに星花にもかけてもらったおまじないが
成功してしまって──
あ、でも、星花だって
得意なことはあるんです。
麗ちゃんとかけっこの練習をして
教えてあげたりとか──
といっても、腕の降り方も疲れにくい呼吸も
学校で教わったそのままなんだけど。
もしも明日の朝、
大人になったら──
お兄ちゃんにもかけっこの仕方を教えてあげるのだと思います。
星花よりもずっと早く、
おうちの誰よりもまっすぐ駆けていくお兄ちゃん。
ときどき星花たちを振り返って
手を貸してくれるみたいに──
まさかのその時はどうか、勉強になるふりをして
星花の得意な話を聞いて
星花を安心させてくれたら──
大人になっても自信がつくかもしれないの。
夕凪ちゃんのおまじないが成功したら──
今日は小さな星花のお願いを、
やがていつかは、聞いてくださいね。