氷柱

『にんじんの子供人気』
その気になれば
子供でも食べやすくなるし、
甘みを生かした調理法だって
たくさんあるけれど、
においや
食感で気付かれてしまったら最後、
子供の箸は
とたんに止まる──
栄養満点で
彩りに欠かせないというのに
ただ、苦手な子も多い
悲しい宿命を背負って生まれた食材。
にんじん。
ハンバーグに混ぜても、
ケーキにしても
みんなの大好きなカレーだって
にんじんを見る子供たちの目は
微妙な緊張感を放っているの。
一応、どうしても苦手って子は
うちにはいないし
ピーマンやアスパラガスや
鶏肉なんかと比べると
無理なものは無理ってほどじゃなく
そんなに嫌がらずに
一声かければ食べてくれるんだけどね。
あれっ!
にんじんが苦手だなんて
赤ちゃんみたい!
たったそれだけで
意地を張っちゃって
かわいいものだわ。
少し年が上になると
食べやすくてうれしい野菜の
ひとつになって歓迎される傾向にあるのに──
子供のいるおうちの
にんじんとのお付き合いは
とっても複雑で
悩みの種。
弟や妹がいる子と話すとそう感じるわ──
我が家のお兄ちゃんも
みんなの弟だったりしたら
やっぱりにんじんひとつで
まわりを困らせていたのかしら。
まさか今でもなんてことが
あったりしたら──
その時は、妹たちと同じようにしてあげるからねっ!
ハロウィンのにぎやかな雰囲気で
やけに人気だったのがカボチャのメニュー。
たかがハロウィンで
ここまで子供の心を動かすなんて──
それで、同じように野菜の甘みを生かして
蛍ちゃんが試作品を熱心に開発しているみたい。
この機会に
野菜好きの子が増えたらと考えるのは
とても優しい心だと思うけど
私としては──
氷柱ちゃんの小さい頃に
蛍ちゃんがいたら
赤ちゃんだなんて言われなかったかもしれないね!
だなんて
からかわれるから
良し悪しでとも言える──
いいえ、子供の頃にだって
にんじんくらいは食べていたはずよ。
きっと私が完璧すぎるがために、
覚えていない子供時代を持ち出して
適当なことを言うしか
からかうネタがないだけに違いない!
ま、みんながおいしくにんじんを食べてくれることを祈るわ。
一時の勢いで状況が劇的に変わるほど
子供の頑固さは簡単ではないと思うけど──
なんでそんなに
にんじん嫌いの子供の気持ちがわかるのかって?
別にわからないわよ!
そんなふうに見えるのは
ただの気のせいなんじゃないの!