『まねき』
今日も我が家は──
まあ、言わずとも思っていた通り。
テーブルの上、
冷蔵庫から
キッチンの方へと
どこもかしこも
嵐が過ぎ去った後のよう。
飲み物のリクエストも多いでしょう?
コーヒー、
ホットミルク、
麦茶は用意できるけれど
あまりジュースや甘いものは
いけないし──
あっ、廊下の方も
今日もまた──
ま、言うまでもないことね。
上着は散らばり
靴下は跳ね飛んで
見る限りを覆いつくし
地平線の果てまで続く──ような気がするのは
散らかした後の景色。
きょうだいの多い家族に生まれたから
目にする眺めなのかしら?
もはや、この世の終わりのよう──
あるいは、見る人によっては
何もかもが目覚めるカオスのよう。
もしかすると
ここだけじゃなくて
どこの家でも子供がこんな風なのだとしたら
怖ろしいわね!
考えないことにしたほうがよさそう。
これは小さい子の走った泥だらけの足跡、
こっちは一目でわかるほど違う大きさをした
もう中学生になる立夏ちゃん。
かわいい子は
どたばた駆け抜けた後の足跡もかわいいのでは──
そんなことはなかった。
立夏ちゃんが、乱暴に走って
手を洗い
おやつとともに
どの飲み物を選んだか
あなたにわかる?
ジュースばっかりはだめよって
いつも言われているからかも
しれないけど──
いえ、立夏ちゃんのあの顔なら
細かいことを考えている暇なんて
少しもなかっただけ──
水道に飛びついて
浴びるように飲んで
コップに入れて
お水が一番おいしいんだと
世界の真理を発見したように語ったものだった。
先にお風呂に入るように言われておやつを置いていったけれど
その時に口を付けずに置いていったのが
テーブルの上のあのコップよ。
なみなみとこぼれる寸前まで──
へとへとになっていたわりに
器用なことをしていったわね!