真璃

『あっちの方向が天国』
おそろしいハロウィンの日も近づいてきて、
街にも家の中にも
うきうき楽しいホラーソングや
お菓子になって身を隠した妖怪たち、
仮装だかおばけだかわからない何かが
そこらじゅうをかけまわって
大変だわ!
廊下を走って来るのは
青空くらいの身長の
青空みたいな声でおばけだと主張する
白いシーツ。
前世で王妃としても活躍した
経験豊富なマリーの目で
見抜いたところによると、
おそらくあれは
きっと──
おばけね!
こわい!
でも、強くてえらいほうのおばけたちは
大きかったり
首を伸ばしたり
ふわふわ浮いたりしながら
おどかしてくるから──
あれはしたっぱの子かしら。
まだまだおばけ人生の一年目、
といった感じ。
お天気お姉さん一年生の海晴お姉ちゃまと仲良くなれそうね。
忙しい日々に見つけた
まさかのできごとで
しみじみ苦労を語り合ったり
とっておきの体験を教えたりしながら
夜も更けていくの──
なんとなくの気分で
どうでもいいお話もしたくなるくらい
少し──内緒話ならがやがやかき消されそうな
にぎやかなところがいいわね。
お料理もあったかいとうれしいかもしれない。
ちょうど、かぼちゃがなぜか至る所に
たくさんある時期だものね。
パーティーみたいに話も弾むことでしょう──
うーん、いいわね。
よくわからない知らないものたちが
仮面をかぶって
ふわふわ踊り
いつのまにか隣にいる時期。
マリーにも新しいお友達が
ひとりくらいできないものかな?
フェルゼンもこのチャンスに
なんでも話せる人ができたらいいと思わない?
あれれ、仮装用の服の山に埋もれて
ここにあるのは
だいたい高校生の男の子くらいの体格で
身に着けるとちょうどかっこよさそうな動物のお面と、
年長さんのおませで背伸びをしたがりな女の子にふさわしい
ポップでユーモアのある
カラフルなドミノマスク。
ああ──こんないいものを
いったいどこで
誰が身に着けるのだろう。
おばけが奪っていくのだとしたら──
時にはそういうことだってあるわよね?