『フローレンス』
女の子たちは今日も
それぞれの毎日を過ごしている。
全員が、必ずしも
穏やかなばかりではなく
具体的には──
昔の人が言ったように、
天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、
苦悩する者のために戦う者である、というわ。
戦いよ!
そして、激しい前線にはいつも
情報収集が必要なの。
斥候を務めるのは青空ちゃんと虹子ちゃん。
小さいからどんなところにも入り込めて、
見つかってもごまかせる。
正直にスパイに来たとばらしても
あんなに可憐で愛くるしい二人を
捕らえることなんて誰にもできないわ。
その有能な二人からの報告によると、
どうやら霙姉さまは
誰にもその実力を見せることがなかった
針仕事の腕前を──
子供たちに披露してあげたそう。
小手先の工夫で
ごまかせる技術ではないことは──
普段からよくお手伝いを任される私たちなら
よく知っている。
みんなが子供の頃に
一度は遊んでもらった思い出のある
大事なぬいぐるみの修繕を
はたして実績のない霙姉さまに任せていいものか?
正しいのは
疑っている私たちか──
疑われる覚悟で行動を始めた霙姉さまなのか。
頼れる蛍姉さまや小雨ちゃんは、
任せてもいいんじゃないかって態度だから
たとえぬいぐるみを奪い返したとしても
上手に直せる自信のある子は
あまりいないみたい──
それとも、みんな
暑い夏が終わったあと
学校行事も家庭内のイベントも少ないこの時期に
暇を持て余して
盛り上がる機会を探しているのかしら。
まだまだ作戦は継続中で、
見張りは続けられ、
ぬいぐるみに何かあったら
いつでも取り戻しに行く準備はできている。
たとえ布と綿で作られていても
大事な友達を見捨てる者は私たちの家には一人もいないわ。
全員が助けてあげたいと思っている
傷ついたあの子の運命は──
これからいったいどうなるのだろう!?