氷柱

『真夏のよう』
あつい!
久しぶりのような気がする。
もう9月も終わろうとしているのに
こんなに気温が上がってどうするっていうの。
まあ、毎年たまにあることだけど……
いつもならあついあつい言っているところへ
暑苦しく飛びかかってきて
余計に暑くなるから言わないようにと
あれこれいたずらをするふりではしゃぐ子供たちが
転がりあっている頃だけど──
今日はそれどころではないみたい。
しばらく需要のなかったアイスが
ここにきて急に求められ、
冷房の効いたキッチンに集まり
がんばるぞーって張り切っているのは
料理の腕には多少の自信がある子たちと、
この夏にだいぶアイスの作り方を教わって
できないこともなさそうだと気が付き始めた子たち。
そして──
面白そうだから集まってきた子たち。
暑い日だっていうのに、
むしろ暑い日だからこそなのか、
やっぱりここも
暑苦しい──
でも、気が付いている子は
まだ少ない。
いま、こうして暑くなった9月は
あることを
知っていなければならないのに──
なにしろ日が落ちるのが早くて
気温がすぐに下がるのも
真夏では考えられないほど。
それが今。
もしもアイスを作りすぎてしまったら
食べ過ぎた体は冷えて、
おまけに冷凍庫を圧迫する膨大な容量を残すことになる。
先のことを考えて自分の行動を律するのは
勢いだけの子供たちでは決して叶わないわ。
秋が来たことを私たちは知っている。
ちょっとアンニュイで肌寒くて
多少の物思いと長い夜の計画性が求められる──
まさに大人の季節がやってきた。
まったく、小さい子はまだ気づいていないみたいだからいけないわ。
でも、あんまり大人大人っていうほうが
子供っぽいんじゃないかって
海晴姉様なんかはときどき面白そうに笑ったりもするけれど、
別に準備をしておくくらい、
いいわよね。
そう思うでしょ?
タンスの中身もだいぶ入れ替わったこのごろ。
あったかさを考えつつ、この日のために夏の名残を残しておいたのも
計画性の一環というわけ。
え?
行き当たりばったりの行動を強がっているように聞こえる?
そ、そんなはずは──
まあいいわ。
あなたもあんまりアイスを食べて体を冷やさないようにね。
秋の日が暮れたら、
ちゃーんと
あったかくするのよ。