『歓楽』
コーヒー、
紅茶に
砂糖とミルク。
妹たちと弟の
学校の様子や、
毎日の過ごし方を
ゆっくり聞きながら過ごす
平和な時間──
だから、
たまたまみんなのいる場所まで
聞こえてくるだけであって、
麗が言うように
お茶とお菓子で談笑しながら
人の恥ずかしいところを見物するのは
どうか、といった話ではないのだ。
結果としてそうなってしまうことも
あるのだけれど、
まあ、きょうだいが多い家では
誰かがいつも叱られているくらいは
ふつうだ。
ひとつしかないおもちゃの
取り合いのけんかを始めて、
うっかりティーカップ
ぶつけて欠けさせて、
何かの拍子で
たまたま砂糖を入れすぎた──
私たちが集まる場所に
騒ぎの種は尽きることなく、
今日もまた
どら焼きの大きい小さいで
くらべっこだ。
深みのある漆黒が
巨大な宇宙に数多ある
ブラックホールに似ているとするなら、
引力の大きさにかかわらず
それは知識とロマンに満ちた現象であるに違いないし、
果てしない宇宙の塵として
運命を共にすると知るならば
子供も大人も
関係なく愛を注がれるのと同じく、
どら焼きである限り
それは愛おしいものであると──
大きいほうを狙う欲張りたちに言い聞かせる。
自分もかつて、
目の前ばかりを見て
あの少しでも大きいおやつを追い求めたことを
懐かしく思い出しながら──
自分の手にあるのも混ぜて
じゃんけんで公平に決めるつもりが
結果的に手元に戻ってきたのが一番大きいどら焼きだったことで
公平なはずなのに怒られるのと
きっと状況は変わらず、
麗だって同じように日々の営みを過ごしているだけなのだろう──
でも、あんまり怒られて
門限を短くされても困るんだろうな。
そんな時は、フォローができたらいいんだけどな──
帰り道で見かけたら声をかけて連れて帰ってくる、というような。
家族と帰宅につく途上も
少し遅くなるのに付き合うのも、
おそらくは銀河の果てしない旅に似たようなもの──
私たちの選ぶ、確信を持った歩みだ。
家族と過ごす──こんな時間のただの続きだ。