夕凪

『夢の中では』
ああああーっ!
なんてことだ……
こ、こんなひどいことが
あっていいのか!
昨日の夜は
眠くて眠くて
とてもやり切れるとは思えなかった宿題。
そこですっきり目覚めた
早起きの朝に
やることをぱぱーっと片付けてみたら
いいんじゃない?
だめ?
どうかしら?
夕凪のひらめきは
きっと、何も間違っていなかったはずなのに──
すっかり宿題を済ませて
これで終わり!
と思ったら
それは夢で本当はこれから始めるところだったの。
うえーん!
さっきやった
ばっかりなのに
こんなのってないよ!
そんな話をしてみると──
テストの前なのに
何も勉強をしていなくて焦っていたら
夢だったり
お天気予報の番組がはじまっているのに
まだ家にいると思ったら
夢だったり
デートの途中で目が覚めてしまったり
線路にあこがれの車両が入って来るところで起きたり
おいしいものを食べようとした瞬間に──
とにかく夢は
くせもの!
夢を見る人間は──
いつも翻弄されてばかり。
でも、夢で食べる寸前だった
あんみつのお店に
放課後に食べに行く予定を立て、
つらい授業もお腹がすく体育も
そのおかげで乗り切れる!
なんていう
いい夢もあるらしい。
ああ、夕凪の見る夢が
そんないい夢であったらな!
せめて夢の中でもいいから
かしこい氷柱お姉ちゃんや
優しくてかっこいいお兄ちゃんに手伝ってもらえたら
夕凪の朝はそれだけで
まぶしく輝くラッキーなものに変わるのに。
ときめき
せつない
夢の世界。
毎日いい夢で目を覚ませば
夕凪はとーってもうれしくて喜ぶんだよ。
あ、宿題しなくちゃ。