綿雪

『わたしのたからもの』
雨の続く日は
気分も何となく
沈みがち──
くつしたが
濡れてしまった!
かさを
忘れてしまった!
卵がなくなったけど外は雨!
そんなとき、
元気を出すのに
ちょっといいのが
手間と時間をかけた
楽しい食事。
オーブンの前で待つ
ホタお姉ちゃんの周りに
期待して集まる子供たち──
ユキ、おどろいたの!
クリスマスやお誕生日の
特別なメニューも
おうちで作れるものだなんて。
お手伝いのみんなの前で
まな板に並ぶのも
普段はあんまり見ないお野菜。
身が固く引き締まった
あんまり見ない外国っぽいお肉。
そして、あんまりキッチンには
こんなにもいい匂いを広げることの少ない
おいしそうなチーズ──
生地まで手作りとは
いかなかったって
ホタお姉ちゃんは笑うけれど
今日だけはなぜか不思議と
ピーマンもサラミも人気で──
出来上がる前から予約の取り合いがはじまるほど。
ピザが焼きあがる時間を聞いた
子供たちは──
きっとそれまでに
お姉ちゃんたちの似顔絵を描きあげる!
今日こそ完成させる!
って、張り切っているけど
ユキはたぶん──
時間が来ても
もうちょっとって夢中になって
なかなか途中で終われないと思うな。
でも、いい匂いがして来たら
今日は違うのかな──
なにしろ普段とは違う特別なメニューだもの。
ユキにはどうなるかちっとも予想ができない。
雨の日だけの
特別なお楽しみがいっぱいの
家の中──
外に出られなくたって
こんな日は
ちっとも悲しくない。
ずっと面白くて──うれしがってばかりなんです。