『雨の日の』
この季節、
ぽつぽつと音が
やまないように──
家の中では
にぎやかな声がいっぱい。
繕い物をする
お姉さんたちのお部屋のほうまで
大人しくしているからと言って聞かない子が
どんどんやってきて
たまには──言葉の通りに大人しくしたりもする。
お友達にはよく
いつも修学旅行のようだと驚かれる
私たちのおうちも、
雨で家の中にいる時間が増えたこともあり、
ますます毎日は
騒動が増えている──
少々のことくらい
蛍はどんとこいなんですけど
こんなふうに日々が続くと、
たまには一人でいる時間が
欲しい子は──
少し困っちゃう。
お兄ちゃんもそう?
たまに、少しくらいは
一人静かに過ごしたい?
うふふ──
こんなこともあろうかと
蛍、前に聞いたお話を
覚えておいたんです。
お姉ちゃんたちも時々は
静かな時間を過ごしたい──
大人たちは
少しの手作りのおやつと
水筒に入れた飲み物、
念のために虫よけスプレーなどもそろえて
裏山の少し開けた場所にある
あずまやへと向かうのだそうです。
いいお天気の散歩でたまに裏山を歩くと、
落ち着いて腰を下ろすこともある
あのあずまや。
ホタの想像だけど
きっとそこでは──
生き生きと色鮮やかな緑や
美しく花に囲まれて、
楽しかったこと、
大変だったこと、
おいしかったことなどを
思い出しているのだと思います。
ただ黙って
自分を見つめなおすと
今まで何気なく通り過ぎた日の記憶に
新しい発見があったりして、
そうして人は少し
大きくなることもあるのだそうです。
人間にはそんな力もあるんですね。
可能性というやつなのかもしれません。
一人でちょっと落ち着きたい子に
軽食を作って渡して、
ホタ、励ますつもりの火打石で送り出したら
やっぱり雰囲気が壊れてしまうかしら──
今はそんなに一人になることも知らない蛍です。
雨はしとしと──
お出かけする家族がいたら
大騒動のおうちに閉じ込められた子供たちにまじって
腰を落ち着けたいつもの場所──
いつでも、みんなの無事な帰りを待っています。