吹雪

『キャンディ』
雨、
雨、
雨ばかりの日が
続くようになると──
家の中で聞こえる歌もそればかりに変わります。
玄関で、廊下で、
リビングで、浴室で。
雨はそれほどまでに
小さい子の多い家に
影響を与えることがある──
そんな時に
よく聞く言葉で、
あめが降るなら
あめが降るのであれば
理想的であり
歓迎したい──といった趣旨のことを
子供ばかりでなく大人までもが言い出します。
キミの口からそのような話を聞いたことがないので
男女を問わず楽しめる冗談であるかは
今の時点では確認することができませんが、
おそらく日本語を理解する人間の多くが
考えたことがあるのではないかと思います──
水蒸気がもととなり
水分に少量の不純物を含んだ水滴を
あめと呼ぶのに対し──
砂糖水を熱し
場合によってはカラフルな色を付けたり形状を工夫するなどの加工をして
固めたものを
あめと称する。
はたして、あめのかわりにあめが降り
子供たちが大喜びすることは
実際に起こりうるのか?
砂糖を加えた水も沸点は純水とそれほど劇的に変わらず
摂氏100℃を少し上回る程度。
ただ、気象状態である雨が水蒸気の飽和によって作られるのと比べ
鍋にかけて長時間煮詰めたような高温は
大気圏では観測しにくい。
あるいは、たまたま雷雲の中の状態が
一部分でもキッチンの中と同じようになる可能性があれば
あるいは──
何かの原因で大量の砂糖が空気中にあったなら、という前提はありますが。
今日の私のお手伝いは
煮物の管理。
暑さが苦手なので鍋から少し離れて
適切な火加減の確認と
キッチンタイマーでの時間の計測。
頭が働く余裕が充分に取れる役目だったからなのでしょうか。
世の中の大きな発見のいくつかは
このように脳を休めて日常生活を送っている最中に
閃くことがあると聞きます。
今日この日が科学の発展において
重要なひらめきを得た歴史的な瞬間であったのかもしれません。
考えをまとめてみると何かが見つかるのかも──
それとも、少し熱の影響を受けて
鈍った頭で意味のないことを考えていただけなのでしょうか?
いずれにしても──休息が必要です。
では、おやすみなさい。
科学的な技術の獲得か、あるいは
いい味に仕上がって評判だった煮物の夢をみるかもしれません──