立夏

『料理人登場』
おいしいものを
食べよう!
まもなくわがやに連休がやってきて
楽しいことや
なんでもできる時間を
みんなが好きなだけ置いていっては
やがてどこかへ去っていくという──
リッカは考えたんだ。
遊んでばっかりで
おなかをすかしていては
夢のように過ぎ去る休日が
もったいない。
少しくらいは
自分で作れるようになったら
それはとてもいいことじゃない?
ホタおねーちゃんは言ってたの。
もしかしたら立夏ちゃんには
ひそかに眠る
料理人の才能があるんじゃないかって!
ホントだよ!
おせじじゃないよ!
なにしろ──
ちょっといいにおいがすると
すぐにわかって
とんでいく
このすばやさ!
そして鋭い嗅覚──
雑誌を眺め
戸棚をあさり
おいしいものを
求める執念!
料理人に必要なものは
全部そろっていて
あとは
落ち着いて練習をするだけだって。
オニーチャンも
気が付いている?
リッカがうろうろする
明るいキッチンの
その奥では、
オリーブオイルに
にんにくのみじん切りを入れて
炒めたあの匂いは──
いい予感しかしないってこと!
ゆで汁を加えて──
卵とチーズと
ブラックペッパー。
才能が目覚める瞬間が
もう目の前に迫っている!
あと注意するのは
味見のしすぎで
晩ごはんにみんなが集まる前に
なくならないか、
それだけ!
立夏が休日を駆け抜けて
いいものばっかりが
生まれていく──
おなかいっぱいになったら
今度は何をしようかなあ!