氷柱

『読書の時間』
いっぱいいっぱい
時間がとれる
長いお休みを前に──
家族はみんな
静かに落ち着いて読める本を
探しているわ。
いや、少し違うかな。
とにかく
ワクワクしたり
しんみりしたり
ぞくぞくもたまにはいいな、と
たくさん心を動かされる
何か特別な体験を、
さわやかで過ごしやすい季節に──
できれば家にいながら
快適な環境と
ゆったりできる服装で
たまに寝転びながら
しかも気が向いたときにジュースでも用意出来れば
最高!
くらいの感じかしらね。
落ち着いて読むということを
みんなの意見を聞きながら
私なりに解釈すると──
そうなるわ。
あなたもそうなの?
ぐだぐだ過ごして
楽しみ方まで
人に教えてもらおうなんて
考えていたりしないでしょうね?
言っておくけど、楽しく読める本とは
時間をかけて
足を使って
時にはハズレもたくさんつかんで
その果てには本が埋もれた部屋の
大掃除と常に向き合う
たいへんなものよ!
口を開けて待っていれば
面白い本が降って来るなんて
あいにく一度も経験したことがないわ。
もしも良い本を見つける
コツがあるというのなら──
一期一会の瞬間を大事にすることね。
必要な時に必要なものを見抜ける集中力を
いつも欠かさないように──
普段から運動もして体力をつけ、
食事もバランスよくとり、
規則正しい生活をして
体調に気を使いながら──
そうして努力を重ねてやっと
ほんのわずかにすれ違うだけの出会いを
見逃さないで捕らえることができるの。
私もまだまだ
遠くはるかな目標としてしか見ることのできない
そんな充実した日々──
すぐにはたどり着けない場所でも
毎日心がけていれば
もしかすると──
一生に一冊くらいは
本当に大事な本に出合えるのかもね。
え? 連休までに
本を用意しておきたい?
だったら日々、
修行を重ねて
いい本に反応するアンテナの感度を
少しでも上げておくことね。
といったようなことを話すと
みんなは途中で逃げていくから──
適当な本を見繕っておいて
言えなかったことはここでこぼれ出てきてしまうわ!
よく最後まで聞いてくれたわね──
下僕もヒマなの?
時間つぶしの本の一冊もないなら──
私がいっしょに探してあげないでもないわ。