ヒカル

『トコトコ』
季節はすっかり
暖かくなり、
庭を転がるように走る
小さな子供たちも
いつのまにか──
寒かった時期の縮こまっていた様子なんて
少しも見せないで
ぴゅんぴゅん風のよう。
まるで何年も前から
毎日毎晩
同じ遊びばっかりで
慣れたものだと言うみたいに
私たちが追いかけるのも振り切って
緑が目立ち始めた
大きな木の幹の向こうへ──
と思うと
庭の向こう側へ。
足には自信があったつもりなのに
あんなに小さい子たちに追いつけない!
ショックだな。
なまったかな?
たまには本気で
かまってやるかと
運動を始めたところで──
春風がやってきては
もうお年頃なんだからと
帽子をかぶせたり
上着を着せたり
世話を焼く。
紫外線には気を付けてと──
困ったな。
年頃になったつもりなんて
全然ないのに
これじゃ、いつまで経っても
追いかけたい子たちに
引き離されるばかりじゃないか?
私はまだ
初夏のような日差しなんて
気にしないんだ──
紫外線も日焼けも
何にも怖くない。
それなのに──
なんとかして春風や
人を着せ替え人形にして楽しむ
海晴姉や蛍から
今度こそ逃げなくちゃ──
ああ、今日もいい天気だな。
誰だって何もかも振り切って
汗をかいてぴゅんぴゅん風みたいに走らなくちゃ
こんなにいい日にもったいない。
そうだろう?