小雨

『簡単じゃない』
泣いても笑っても
ついにわが家に春がやってきました。
汗かき過ごす
暑い日に
押し入れから次々と
お部屋のタンスに押し寄せるのは
かわいい肩出し
かわいいへそ出し
かわいいおひざ出しの
快適な夏服の大波。
小雨は
あまり肌を出すのが
落ち着かなくて、
恥ずかしい──
しかも立夏ちゃんがすすめてくれるのが
ひときわ大胆で
大人っぽい──
もうすぐ中学生ならこれくらいは着ないと
いけないんだって
おどろきの服が多いです。
そうなんだ。
中学生っておそろしい──
小雨はこれから本当に、
やがて夏服を恥ずかしくなく着ることのできる
大人になれるのか
いつも心配してしまいます──
夕方になって風が出てきたら
少し厚い服を
震える肩の上からもう一枚。
さらにエプロンをつけて
夕食の準備を始めたら──
涼しげなおそうめんの付け合わせに
まだまだ日の落ちた後にはあつあつが恋しい
なすとまいたけの天ぷら──
あんまり急に
暑くならないでくれると
小雨もゆっくり心の準備ができそうです。
夜になったらまたもう一枚を羽織って
ほっとして──
考えます。
明日が来たら、そうしたら
今日より少しは恥ずかしくなく夏服を着ていられるのかな──
もうすぐ中学生の小雨は
どうしたら大人になれるか
まだちっとも全然わからないまま──です。