『仕切り直し』
11歳。
天使麗。
将来の夢は──
きちんと勉強し、
英文科の大学に進んで
通訳になり
人の役に立つ仕事をすること。
飛行機に乗って
まだ行ったことのない
世界中の国を回り、
知らない人と出会い
そして、
そして──
やっぱり嘘だとわかっていても
これはだめね。
じゃあ次。
将来の夢は、そうね。
心穏やかに山奥で暮らし
鳥の声と花の色だけを友にして
世を捨て
頭を丸め
ただ静かに
神様の教えだけを信じ──
いえ、さすがにこの歳で
そこまで思い切るのは行き過ぎだわ。
だいたい最初からおかしいのよ。
小学五年生の国語の作文が
私の将来の夢──
子供みたいな荒唐無稽なことは言えないし
かといってそこまで真剣に考えている子も
あまりいないと思う──
何を期待されているのかさっぱりわからないけど
深読みをせずに書けないことだけは
確かだわ!
たとえば──
子供の頃からずっと変わらない
将来の夢は運転士。
ううん、そんなにうまくいくのが世の中ではないと
わかっていても──
鉄道関係の仕事に就けたらいいとは思うわ。
力強くたくましく
弱音も吐かず
人の暮らしを目立たず支え
きれいな姿でも少し古くても
いつも毎日の仕事を続けられるのが
なんだか私には
うれしそうにしているみたいに見える──
そんな営みをどっかで助ける人になれたら
きっとうれしいと思う、
なんてこと。
作文の内容に書くことじゃないと
私だってわかるもの!
はあ……
子供の毎日も悩みが尽きないわ。
早くこんな意味の分からないことをしなくてもいい
ちゃんとした大人になれたらな!