『厳しい掟』
まあっ!
だめだめ!
いけません!
いくらお兄ちゃんに買ってもらった
すてきな本で
料理人の大切な心掛けや
おいしそうなケーキの種類をたくさん
学んだからといって
いきなり台所に立って
まぜまぜや
こねこね、
あまつさえ
オーブンで
やきやきなんて
はるかに遠い夢!
あれ?
オーブンの場合は
めらめら──と言うほうがあってる?
ともかくだめ!
厳しいようだけど
これもわがやの決まり。
海晴お姉ちゃんは
ママから教えられ、
春風お姉ちゃんは
海晴お姉ちゃんから。
ひとつひとつ
学びながら──
長い時間をかけて
認められ、
やってみろの言葉で
台所当番ははじまる。
虹子ちゃんは──
お姉ちゃんと一緒にする
手洗いのやり方は
よくお勉強しているみたい。
えらいね!
じゃあ、飾りつけを
お任せしてみようかな。
できる?
チョコレートを絞り出して
絵を描くという
むずかしいこと──
虹子ちゃんがいろいろ覚えようとするのなら
蛍は自分が知っているだけの
楽しいことを全部
ひとつ残らず伝えるの。
おいしそうに見える飾りつけ。
みんなが喜んでくれる味の出し方。
大事な人を毎日笑顔にしたくなる
世界で一番
楽しいことを──
蛍が教えてもらって
今もどうにか
学び続けている
あれこれ。
どこまで伝えられるだろう──
たくさんのことを
長い時間をかけてじっくり勉強するの。
蛍の妹だから
できるよ。
そのかわり、おかえしに
虹子ちゃんの知っているたくさんのこと、
お兄ちゃんとする楽しい遊びの全部を
教えてもらいながらにしようかな。
全部──
知るまでお勉強は終わらないんだから。