『物語の続き』
次の駅で降りて
改札を抜け
まっすぐ伸びる駅前通りを
最初の信号を目印にして
徒歩三分……子供の足ならもう少し長く。
あっ!
窓の向こうにかすかに見えた
あの建物が
大きなビルの中に
地上七階、地下一階、
広い面積の売り場を持つ立派な書店──
今日のあなたたちの目的地よ。
見えなかった?
まったくもう!
それにしても──
電車の窓から眺めるこの景色も
考えてみれば、
だいぶ変わったものね。
私が小さな頃に
おこづかいをためてお目当ての本を探しに
ドキドキしながら向かったあの頃と
違うお店、
新しい建物──
虹子ちゃんが大きくなった時に
歩いた道の話をすると、
だいぶ違っていたりするのかしら。
もったいないわね。
海晴姉さまと手をつないで歩いた
あの頃の景色も
忘れられない──綺麗なものだったのに。
今日の私は
そちらには向かわないけれど
迷子には気を付けて、
コロナ対策をしっかりすること、
それから──
とりあえず6階を目指すといいんじゃないかしら。
少し大人向けなら5階か4階かな……
いえ、確実さを求めるなら
店内の案内板を参考にするのが一番だと思うけど。
一応、それだけ。
じゃあ、いってらっしゃい。
私も今日は早めに帰らなくちゃ
海晴姉さまにまたうるさく言われるわ。
あなたも氷柱姉さまも
虹子ちゃんも気を付けて。
暖かくてのどかな日だからって
寄り道なんかして遅くなると──
私は忠告したわよ。
家でお土産話を楽しみに待っているみんなの反応が
どうなっても知らないからね。