『秘密』
ころころ
ちょこちょこ
とことこと──
小さな妹たちが
私の後ろを歩いて
追いかけてくる。
こういう眺めを
前に目にしたことがある気がするな。
あれは確か
蛍が歌っている後ろを
声を合わせて歩いていた時だとか
夕凪が学校の工作を見せようとして
廊下を走っていた時などだ。
その時に夕凪は
逆に追いかけ回すようになったし──
蛍もなぜか一人一人を捕まえ
振り回して喜ばれたような気がする。
私のポケットに穴が開いて
お菓子がボロボロ零れ落ちた
あの時から
おせんべいやチョコレートを求める足音が
いつまでも終わらずに続く──
もうお菓子は
ポケットの中にないのにな。
失われた目的を追い求める
無限と同じ意味の旅は
このまま──永劫の時を刻むはずだった宇宙が
熱力学第二法則に敗れ去るまで
我が家の廊下を歩み続ける。
すべての
悲しい彷徨はいつも
このようにはじまり
果てを知らないのだ──
もしも天から
不思議な恵みが降ってきて
この手を満たすなら
ひととき足を休めることくらいは
できそうなものなのに。
その場合は私も
穴の開いたポケットを確かめるふりをして
近寄ってきた妹をつかまえたほうが
絵になるのだろうか。
でも何か別の話になっている気がするな。
お菓子はなく
しかし野望があって
情熱の温度は上がり──
汗をかき始めたから
チョコレートのような溶けやすいものは
降ってこないほうがいいのかな?
天使に早く──教えなければいけないな。