綿雪

『冬の上から下まで』
寒さはついに厳しくなって
お姉ちゃんたちがいつも
ユキの体を心配する。
ちゃんと──
気を付けないといけないよ。
ただでさえ体の弱い子が
調子を崩してしまったら
ずいぶんお休みしないといけなくなるもの。
学校にも行けなくなってしまう。
ところが
なんと──
お兄ちゃん、知っている?
ユキはどうもこのごろ
不思議と体調がよく、
不安なく眠れるし
何も怖いこともない。
春の来る頃には
普通のこと全然ちっとも変わらないみたいに
元気になっているんじゃないかな?
一人で勝手にそう思っている。
それとも意外と
みんなユキの顔色を見て
もしかしてと
思ってくれているのかしら?
念には念を入れてだけど
もしかしたら──
と。
冬の冷たい
まだ暗い朝、
すっきりよく眠った目を
ぱちぱち──
布団に包まれていると
どこからか明るい声がする。
ちゅんちゅん──
ちちち──
お兄ちゃんも聞いたことがある?
天使みたいにきれいな声。
音楽の時間に音楽室で聞くのと
どこか似ている踊るような──
それは小鳥のさえずり。
ユキよりも小さい体で
震えていたら寒さにも
あっという間に負けてしまいそうな
ささやかで
精一杯の声──
ユキは、元気になったら
あんなにかわいい声で歌う
小鳥たちをよく観察するために
白い息を吐きながら朝のお庭にも出てみたいな。
暖かく着込んで
わくわくしながら
生まれたての日差しを浴びに行く──
お兄ちゃん、ユキのわがままは
今年の冬のうちには叶うでしょうか?
今朝も聞こえた声は
お兄ちゃんと手をつないで目を閉じた
夢のあとにも──
明るくユキを待っている。
ああ、明日も早く起きれたらいいな。
お外に出ていく前に
もうわかっていること。
冬の朝はとてもきれいです──