観月

『お出迎え』
立夏姉じゃのお友達が
遊びに来たのじゃ。
といってもこのご時世、
話も控えて
ノートを写して帰るだけ。
仕方のないことだが
せっかく来てもらったのに
見せる顔がどれもこれもマスクの上から
お話もできないのであれば
歓迎したい気持ちも
少々さみしい。
せめて、
やれることでもするのだと
ひなたに干しておいた座布団を
次から次へ運び込み
積んで積み重ねて
ふかふかして
帰ってもらうくらい。
わらわも
マリー姉じゃも
青空も虹子も
体より大きな座布団を抱きかかえ
おうちじゅうのありとあらゆる座布団が
立夏姉じゃのお部屋に集まり
充分にくつろげるよう──
さくらの運び込んだくまのぬいぐるみも待っているお部屋じゃ。
学業は
はかどったであろうかの。
廊下の方から覗いていたら
いつもほどではないが──
にぎやかな声が聞こえたぞ。
お楽しみのおやつも一緒に食べられないので──
おみやげに持って行ってもらう
簡単おやつを立夏姉じゃは
氷柱姉じゃと協力して作っておった。
そういえば前に来た時も
立夏姉じゃが作ってもてなしたというぞ。
そのときに足りなかった家族の分も
作ることができたので
勉強熱心な中学生のお姉さんたち
今日はわらわも同じおやつ。
兄じゃも同じおやつじゃ。
明日は座布団を干してしまって
それでようやくおもてなしはおしまい。
かわいい姉じゃのお友達たちに
また来てとは言いにくい時でも──
帰り際
今度来たときは
一緒におやつを作る約束もできた。
指切りはできなくとも
きっと確かな約束と思うことにしよう。