真璃

『芸術展』
一富士二鷹三なすびの
おめでたい日から──
だいぶ続いていた寒さも
とうとう一段落。
あっという間に日が暮れて
いや増す闇、
長い夜の始まりに
星が灯る帰り道なら
電車ごっこしながら歩く毎日は
まだ続きそうだけど、
それもきっとあと少しの間のこと。
人はみな
まるで春みたいな夢心地の陽気が
やってくると
つぼみがふくらむ予感を感じ
これはもうすぐ次はひな祭りみたいな
浮かれた気分になるの。
きっとその日が来るまであっという間ね。
興奮しちゃう!
さて、寒くても暖かくても
みんなが好きなのはお風呂。
マリー、お風呂がだーいすき。
フェルゼンと踊る踊りと
フェルゼンと歌う歌の
次くらいに好きかな。
知っていた?
マリーは音楽がとっても好きなの。
お風呂で聞こえてくる
みんなの鼻歌。
なんにも高尚な
ピアノの音でなくても
いつでも楽しいんだもの。
お外の旅のわらじを脱いで解き放たれ
温かなお湯で気持ちがほぐれて
自然にこぼれ出す歌が
いいものでなくてなんだろう。
困ることと言えば
本人も意識しないで出てくる歌なのだから
あの歌は何だったの? と聞いても
覚えていない場合があることよ!
耳に残るあの歌の
正体はいったい──
こんなもどかしさも
みんなで入るお風呂には付き物。
今もマリーの耳を離れない
その歌詞は確か──
俺は──
森の兄弟の──
末息子──
美しい──
とかそんな。
野性味があっていい歌ね!
マリーの日常ではなかなか触れることのない趣味も
お風呂では自然に入ってきて──
ああっ!
縁がなさそうなのに
元の歌にたどり着ける日は来るのかしら。
新年そうそう大変な宿題を背負い込んだものね。