立夏

『こっちにおいで』
寒がりの子は
よっといで!
日々を暖かく過ごすことに
余念がない、
立夏のお部屋には
冬を乗り越えるために必要なものが
なんでも揃っている。
なんでも貸してあげる!
持っていって!
ファーのコート、
かわいい手袋、
おしゃれなマフラー、
鬼滅のマスク。
朝も昼もありがたい
インスタントの
コーヒーも、
小腹がすいた時の
チョコレートも
ないものはない。
欲しいときに欲しいものが
出てくるように
日頃から考えているんだもの!
なかったら──
風邪をひきそうなときに
毛布を探して
一緒にくるまってもいいし
耳が冷たい時に
手を当ててあげれば
誰も困らない。
こうして冬は
寝転んだ立夏
暖かくしているみんなの周りで
ゆっくりと過ぎていく──
また立夏を頼りにする子羊の
あわてた足音が聞こえる。
ええっ!?
おつかいに出た
春風おねーちゃんが
迷子になった!?
泣きながら電話をかけてきた!?
お財布も忘れて行ったらしい!?
明るい街の雰囲気に
浮かれてしまったばっかりに──
どどど、どうしよう!
よそ見と寄り道が多い
立夏の足で駆け付けるときには
春風おねーちゃんは凍えているかもしれない──
オニーチャン!
お世話になった今年の
最後のお願い!
たーすけーてー!